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YAESU FT-920 アマチュア無線 無線機 |
購入当時オプション品 AMフィルター・ハンディーマイクを含んだ19万円弱の出費です。経費節約のため13.8V直流安定化電源はジャンクボックスから部品をかき集め真空管アンプ用ケースを流用して自作しました。発売後間のない新商品でしたので値引き交渉しましたが期待はできませんでした。販売店で現物での操作性などを確認後 八重洲からは未開梱品を自宅まで配送されました。メーカー直送仮納品書では日付は97/06/30となっています。製造ロットとしては初期ロット品と思います。
隠れ山小屋に入山すると山奥になりますので ほとんどの場合他の人々と接触することはありません。1人でアウトドアもどきです。昼間は水飲み百姓の真似事 夜になるとせいぜいテレビ受信・骨董品真空管オーディオかこの故障したアマチュア無線機をいじるぐらいしか暇つぶし策はありません。山奥であり夜ともなれば周辺は照明もなく真っ暗です。唯一近代的な機器といえば PC OS.win10 pro 64bit ミドルタワーを組み立てましたが自宅の環境とは異なり LAN の環境はありません。緊急通信手段はガラケーのみです。それも通信エリア圏内と圏外の境目 通信不能状態も時にはあります。俗世間と離れた環境です。無線はほとんどはタヌキワッチであり 山小屋では 1.9MHz帯~1200MHz帯 オールモードに対応しています。
そのタヌキワッチ用の無線機が時間経過に伴い受信不能となる故障に遭遇しました。もちろん送信もできません。しばらく電源を切り再投入するとしばらくは動くという故障状態です。
山小屋では自宅道楽部屋と異なり細かな修復作業をする環境ではありません。又購入時付属していました回路図も縮小された図面であり なかなか無線機の内部構造把握することができません。とりあえず骨董品オーディオ機器で遊んでいる自宅にお持ち帰りです。
八重洲無線のホームページを閲覧すると使用している FT-920型は現在メーカー修理は受け付けてもらえない状態です。修理業者も確認しましたが修理代が高額のようです。貧乏人であり懐具合により 新品の無線機も視野に入れましたが購入財力がありません。総務省からは新スプリアス規正により真空管式の無線機はあと5年もすれば再免許が下りません。この道楽もやめるように国が後押しをしており 携帯電話通信用・GPS用途として一部の周波数が乗っ取られています。HF帯はいくらか帯域が解放されましたが 1200MHz帯では混信が起こった場合でも通信業者に文句が言えません。900MHz帯パーソナル無線なども含め携帯電話会社にプラチナBandと称して乗っ取られました。改造機・自作機では局免許をもらうには苦労すると思います。又新規格をクリアするに総務省役人の天下り先と思われる民間関連会社にいくらかの金銭を上納しなければ保証認定が下りません。道楽を続けるにはこのような上納金と手間暇がかかってしまいます。
無線局免許状 備考記載事項 |
一応八重洲・井上・トリオのホームページで商品を見ましたが購入できる機種は FT-991aとIC-7300が候補です。50万から100万円もする受注機もカタログにありましたが対象外です。50年ほど前であれば八重洲FL・FR・FTシリーズかトリオはSライン・TSシリーズが主流でした。現在ではスペックと販売価格を見る限り井上(アイコム)に軍配がありそうです。トリオはほとんど新商品がありません。衰退している道楽・趣味の領域であり時代の流れスマホ全盛の時代と変革でしょうか。当時のラジオ少年はどこに行ったのでしょうか。数多くの人たち・先輩はすでにハンディー機も持たず西国へ旅立ったのかもしれません。
前置き・愚痴が長くなりました。時々脱線しながら駒を進めます。
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FT-920 底部のメイン基板 DSPユニット基板は取り外しています |
仕方なく自宅近くのコンビニで添付されていた回路図を拡大コピーを取り 図面をつなぎ合わせ作業です。作業台で定電圧電源を接続して1時間ほどエージングするとデジタル数字表示が点滅を繰り返し機器が動きません。故障症状が確認できました。VCOロックが外れる(VCOアンロック)の症状です。このアンロック状態でもVCO発振周波数は不明ですが発振状態は継続しています。ゆえに受信も送信もできないような機能を持った構造です。
VCO とは Voltage Controlled Oscillator 電圧制御発振器 L-C発振回路のコンデンサー バリキャップ(可変容量ダイオード)に印加される直流電圧で発振周波数を制御する回路を言います。その制御する可変DC電圧はPLL回路からの制御信号です。
当時民生用NTSCカラーテレビでは電子チューナーが採用されており 電子チューナーではチャンネル選択としてマイコンからのデジタル制御信号で局部発振回路はバリキャップによるVCOデジタル制御方式が主流でした。マイコンを使った制御方法がこのFT-920でも採用されています。
内部構造の解析
この FT-920 では SSB,CW,AM はダブルスーパーヘテロダイン方式が採用されており FMだけがトリプルスーパーです。以前のトランシーバーとは異なり中間周波の周波数は運用できる周波数より高い周波数です。1.9MHz~54MHz までのオールモードトランシーバーですが 第一中間周波増幅段は 68. 985MHz 第二中間周波増幅段は 8.215MHz です。FMモードだけは第2中間周波増幅段から 455KHz 第三中間周波増幅段となりFM検波します。この逆の似通った工程が送信モードです。
これらの関係が理解できなければ故障個所の診断はできません。旧型トランシーバー FT-101シリーズと比較すると内部構造が異なり 部品も小さく数多くのIC類が搭載されています。簡単に素人・エンジニアもどきでは修復できない現代の自動車と同様の構造です。電話ごっこで遊んでいる多数のアマチュア無線家では無線機内回路修理は不可能に近いと思います。テスター・はんだごてさえも所有していない無線家も存在していると思います。
この機種ではメーカー修理依頼するに受付さえ断られます。後は専門修理業者に修理依頼しか思いつきません。しかし金銭的に乏しい懐具合です。名前のように無銭(庵)家です。
とりあえず拡大コピーの配線図にカラー蛍光ペンで回路動作の解析から始めました。動作原理の裏付けに必要なピタゴラスの関数電卓を片手にです。又動作解析に必要な使用されている半導体メーカー発行スペックをインターネットで検索もしなければなりません。回路図だけでは詳細の回路動作は把握できません。メーカー発行のサービスマニュアルでは詳細の動作原理などは記載されていません。サービスマニュアルに記載されている事項は
機器スペック・回路図・調整箇所・調整値・基板パターン図・バーツリスト・調整に必要なサービス(隠れ)コマンド などです。
故障診断フローチャートなどは記載されていませんでした。プロのサービス・エンジニアが扱う資料と思います。
おかげさまでPCには半導体スペックのPDFファイルの数が増えました。必要な場合印刷してから回路解析をします。
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拡大コピーした各基準信号発生器群の回路図 |
例としてアンテナに7.050MHz の信号を受信した場合での回路動作を考えてみますと
受信の場合 アンテナからの信号 7.050MHz を中間周波数に変換するには スーパーヘテロダイン(super heterodyne)動作原理より 上側ヘテロダイン・下側ヘテロダインがありますが 受信周波数+中間周波数(上側ヘテロダイン) であれば第一局部発振周波数は 7.050MHz+68. 985MHz =76.035MHz を混合すれば中間周波数 68. 985MHz に変換できることが理解できます。各バンドで受信された電波は全部この 68. 985MHz に変換されます。
この第一局部発振回路はどのようにして作成されているかを理解する必要があります。添付されていた図面・取扱説明書では詳細は記載されておりません。ブラックボックス状態で簡単な説明です。
この機種は基準信号発生器として水晶発振器で REF OSC(Reference Oscillator) 33.554,432MHz ±30Hz です。オプションとして高安定発振器は TCXO-7 です。周波数安定度はノーマルで±10ppm TCXO-7 では ±2ppm 周波数偏差はノーマルで±7ppm TCXO-7 では ±3.5ppm のカタログ表示値です。オプションのTCXO-7は搭載していません。
(TCXO 温度補償型水晶発振器 Temperature Compensated Crystal Oscillator)
(ppm パーツ・パー・ミリオン parts per million 百万分の一を表す)
参考・余談
以前のアナログ方式NTSCカラーテレビ受像機では 地上波放送は VHF 100MHz帯からUHF 700MHz帯 3分割帯域で運用していました。この電波をテレビの中間周波数 50MHz帯(58.75MHz)にヘテロダインしています。初期のテレビは真空管式でしたがその後トランジスター・集積回路のICへと時代とともに変革していきます。カラー信号は搬送波抑圧方式 3.579545MHzで SSBではなく DSBでした。そのカラー信号復調IC技術がアマチュア無線機の構造にも寄与しています。その技術革新に伴い100MHzまでの周波数でも安定したS/N比も良好な増幅回路が開発されました。アナログ地上放送は地デジ移行しましたのでアマチュア無線運用面では TVI の影響は少なくなっていると思います。地デジの放送帯域は UHF帯 400MHz帯から700MHz帯です。帯域幅としては13ch~52ch分 約300MHzです。62chまで10ch分削られましたが携帯電話用プラチナBand 700MHz帯として乗っ取られました。これは地デジ放送移行に伴い地方のサテライト局も本局と同じ周波数で送信となったためです。これは地デジ放送の場合FM電波とよく似た性質で受信電波信号強度の強い電波を受信し アナログ放送のような同一チャンネル混信・隣接チャンネル混信が発生しにくい方式であるからです。
山小屋・数百メートル離れた数件の住宅では放送局送信アンテナ方向が山影となりVHF帯でも直接波は届きません。海抜は国土地理院の地図では95m~110mほどです。多少ゴースト障害はありましたが受信には大きな障害問題もなく電波が途切れることはありませんでした。回折波の間接波受信です。地デジに変わってからはUHF帯受信障害のブロックノイズが発生し時々受信不能となります。原因は海面反射波・海面潮位変化による受信点における位相差・干渉での受信障害です。障害は不定期に発生します。デジタルテレビ中継局(水平偏波1W局)は直線で4~5Kmほどですがそれも山影となり受信不能です。困ったことです。これも電波伝搬における受信障害です。現在アンテナ設置場所を移動しTV受信機までは約70m離れた場所にアンテナ設置していますが受信障害は完全にはなくなっていません。NHKに地デジ移行に伴う受信障害調査を依頼しましたが改善策はありません。調査担当者からは光ファイバーCATV設備に移行を進められましたがNHK受信料以外に金銭支払いが発生し山間部過疎地での棚田百姓・年金生活者・貧乏人では受諾できません。なぜならCATV会社に年間4~6万円前後の支払いが発生します。それとNHK受信料加算です。山小屋周辺の住宅ではNHKよりのお墨付き 受信料支払い免除 の公文書に準ずる書類が発行されました。
第一局部発振回路動作の解析
受信される信号の周波数+第一中間周波数が第一局部発振周波数となりますがこれを作成するに複雑な構造です。受信機のダイアルを回すことにより受信できる周波数が可変されますが この可変発振器(VFO Variable Frequency Oscillator)は以前の機種で採用されていたアナログVFOではなく DDS(Direct Digital Synthesizer)で作成されたデジタルVFOが採用されています。基準信号からDDSで全面パネルのVFOつまみを回転することによりディスプレーに表示された周波数が受信できなければなりません。この受信されている周波数データーをメインマイコンで解析しDDS出力を制御しています。
この第一局部発振回路が PLL位相制御・発振回路です。制御された直流電圧でVCO回路での発振周波数をコントロールします。制御はデジタル制御です。
(PLLとは 位相同期回路 Phase locked loop 基準信号と入力された信号波形位相差が同じとなるように制御する回路)
PLL回路に基準となる信号はREF OSC 33.554,432MHz ±30Hz です。比較する信号は数種類の信号を混合して制御された第一局部発振信号です。
周波数変換混合ICはこの回路では3個使用されており μPC1037H です。各混合器に入力する信号は DDS(1)で作成された可変できるデジタルVFOからの信号・REF OSC 33.554,432MHz(基準信号)・第二局発信号 60.770MHz(水晶振動子)・第一局発信号(VCOで作成された信号) を比較制御IC(PLL・IC) MB87086APF でマイコンからのデーターにより比較制御しVCOの発振周波数を制御します。
PLL IC 内には基準信号を分周する回路(5~65535分周)とVCOからの発振出力信号を可変分周器(5~1023分周)により作成した信号とを位相比較回路により位相差を検出して制御信号をICから出力します。LPF通過後 可変直流電圧(1~8V)が VCO回路の発振周波数制御電圧となります。そのPLL制御に必要な目的とする可変分周比データーは主CPUから送られIC内部で記憶(ラッチ)されます。
使用されているPLL IC のスペックによると制御に必要な入力信号VCOからの最大周波数は95MHzでありICのスペックを超えないようにするため各所に小細工があります。50MHz帯であれば100MHz を超える局部発振周波数は制御できない高い周波数です。その回避策としてこのようにVCOの発振周波数を低い周波数に変換(ヘテロダイン)してから制御する構造としたため複雑な回路構成となっています。HF帯についてもVCOからはダイレクトの周波数ではなく低い周波数に変換された信号をVCOからの信号として入力しています。その役目をしているICは3箇所あり μPC1037H です。このからくりを見破るのに苦労しました。
下記画像の中央部黒い横長の部品3個がμPC1037H です。PLL IC MB87086APF は右下です。その上にはREF OSC 33.554,432MHz(基準信号)が小基板にマウントされています。右上のシールドケースはキャリヤ用DDS(2) その左側のシールドケースがVFO用DDS(1)となっており 左上から灰色の同軸ケーブルは 2nd OSC 信号が出力されます。見えにくいですが同軸ケーブル付け根付近に 2nd OSC用 60.770MHzの水晶振動子があります。下部中央のシールドケース内に5分割されたVCO回路です
例題の場合のVCO発振周波数は 76.035MHz ですから7.050MHzを引き算すると 第一中間周波数 68. 985MHz に変換されます。
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各周波数混合用信号作成回路群 |
参考記載
旧型機 FT-101ZD 型ではシングルスーパー方式で 第一局部発振回路はプリミックス回路により作成されています。アナログ発振器VFO信号5.000MHz~ 5.500MHzとプリミックス用固定水晶発振回路からの信号を混合し第一局部発振回路を形成しています。このローカル信号と受信信号を混合することにより中間(IF)周波数8.9875MHzに変換していました。
例題のFT-920 と同様の場合7.050MHz受信時では プリミックスでの水晶発振による7MHz帯信号は21.4875MHzとVFOからの信号 5.450MHz を混合すると16.0375MHz(下側ヘテロダイン)が局部発振(ローカル)信号です。この局部発振周波数から7.050MHzの受信信号を引き算(下側ヘテロダイン)すると8.9875MHzの中間周波数に変換されます。その後狭帯域のクリスタルフィルター(8.9875MHz)を通過します。
下側ヘテロダインの場合は受信周波数が低い周波数から高い周波数に変化する場合 混合する可変周波数変化は逆の周波数変化となります。VFO 5.500MHzの周波数が混合された場合7.000MHz 受信となります。
オプションのFMユニット搭載機の場合ダブルスーパー方式で第二局部発振回路があります。8.9875MHzから第二中間周波増幅段455KHzに変換されます。
FT-920 第一局部発振回路の構造
REF OSC 33.554,432MHz(HC-49/U もしくはオプション TCXO-7) この基準信号から各回路に必要な安定したキャリヤ信号を作成します。REF OSC は PLL IC内部の発振回路で動作しており PLL制御の基準信号でもあります。
この無線機では100KHz~30MHz,48MHz~56MHz まで連続して受信することが可能です。これだけ広い周波数帯域を5分割でVCO回路では対応しています。各帯域でのPLLからの信号はローパスフィルター通過後 DC1.0V~ 8.0V の制御電圧です。この可変制御電圧によりVCO発振器で目的の発振周波数となるように制御しています。
第一局部発振回路VCOでの発振周波数は(上側ヘテロダイン)
69.0850MHz~98.6850MHz(4分割) と 116.9850MHz~124.9850MHz をローカル信号として発振しています。良否判定としてこれらを測定するわけです。
参考
5分割されたVCO発振回路での制御する周波数
No,1 0.030MHz ~ 7.299MHz
No,2 7.300MHz ~ 14.499MHz
No,3 14.500MHz ~ 21.499MHz
No,4 21.500MHz ~ 29.999MHz
No,5 48.000MHz ~ 56.000MHz
第一局部発振周波数は目的の周波数に第一中間周波数(68. 985MHz)を加算した信号をVCO回路で作成し混合回路で第一中間周波数に変換される構造です。
このように従来機とは異なり中間周波数(IF周波数)が非常に高い周波数(運用周波数に比較して高い周波数)で動作しているのが理解できると思います。従来機とは異なり高い周波数でも安定かつ S/N比 に優れた増幅回路が半導体素子で開発されたための技術的進歩の賜物です。アマチュア無線機器においても FT-920 20数年経過した現在では無線機といえども中身はデジタル(マイクロプロセッサー搭載)プログラム・ソフトウエアで動作する構造が到来しました。スマホ・パソコンと同様 もはや自力で修復困難な機器ばかりと思います。因業爺さんたちのパソコンを扱えない人たちはソフトのアップデートもできませんね。
参考・余談
I-squared-C (アイ・スクエアド・シー) と呼ばれる各ICデーター通信方式で 各機能を制御している個別に存在するマイコン・制御IC 間データーのやり取りするための方式 システム・バス が採用されています。このバスによるデーターのやり取りで PLL・ IC は 第一局部発振周波数をコントロールしています。データーのやり取りはシリアル伝送です。各マイコンを動かしているクロック信号はほとんど場合水晶発振器(又はセラロック)でパルス波(矩形波)ですが VCO・水晶振動子による発振回路は正弦波(サイン波)で動作しています。各動作を分担している各マイコンでは演算用独自のクロックを持っています。そのため各マイコン間などは並列に接続されたバスラインでデーターの送信・受信作業がリアルタイムで通信しています。又各ICにはラッチ機能があり 制御信号の変化がない限り現在のデーターを保持する仕組みです。これがマイコンによるデジタル制御です。VCO回路がアンロック状態となったためマイコンが異常と判断し 今回ディスプレー数字をフラッシュ表示としました。このようにマイコンの判断で機能停止となったわけです。今回の故障では PLL・ IC で異常を検出したと思います。第一局部発振周波数と基準信号との比較制御が制御不能と判断の結果と思います。
UNLOCK 信号は PLL IC Q2018 MB87086APF 7pin から出力され インバーターTR Q2019 2SA1179 経て CPU Q2534 MB90P263PFV-G 55pin に入力されます。
FT-920 の機器制御プログラムのフローチャートは公表されておりません。個人的な推察であることを了承ください。FT-920 開発設計者ぐらいしか詳細を説明できないと思います。サービスマニュアルにも記載されていません。
ゆえにマイコン制御の詳細は説明いたしかねます。使われているIC・LSI のメーカーから公表されているスペックも確認しましたが 設計者とは異なり今更マイコンプログラムなどの勉強はしたくはありません。修理に必要な動作原理程度の理解力しか持ち合わせません。
キャリヤ信号動作の解析
送信時キャリア用周波数(受信時CW・SSB信号復調用) LSB 8.2135MHz, USB 8.2165MHz, CW ,AM 8.215MHz
このキャリア用信号はREF OSC信号から DDS(2)(ダイレクト・デジタル・シンセサイザー)にCPUからのプログラムされたデーターにより各モードの基準となるキャリア信号を作成します。旧機種ではキャリヤユニットとして各周波数ごとの水晶振動子を搭載していましたがこの機種には存在しません。DDSでプログラムにより3種類作成します。
FM送信用 リアクタンス変調キャリヤ信号は専用水晶振動子(HC-49/U)を使って 8.215MHz のFM波を作成します。
第二局部発振回路動作の解析
第二局部発振回路 水晶振動子(HC-49/U)による発振回路 60.770MHz
第一中間周波増幅段からの信号と 60.770MHz 第二局部発振器からの信号で混合して第二中間周波数に変換します。水晶振動子の発振周波数微調整回路はありません。
第一中間周波数 68. 985MHz-第二局発 60.770MHz=8.215MHz の第二中間周波数に変換されます。(下側ヘテロダイン)
又この信号は第一局部発振回路制御用の周波数混合用として混合用 IC,μPC1037H(Q2025) とつながっています。
測定箇所 第二局部発振回路 60.770MHz(HC-49/U X2001)
TP2005 1.0V/rms 測定機器 RFミリボルトメーターもしくは能力100MHz以上のオシロスコープ 2.828V p-p 発振周波数 60.770MHz ±1KHz を確認。
その後帯域の狭い8MHz帯クリスタルフィルターを通過後増幅しAM復調・SSBのキャリヤ戻しリング復調器を経て音声信号となります。8MHz帯SSB用クリスタルフィルターは初期より実装されていますが 8MHz帯CW用・AM用クリスタルフィルターはオプションです。この無線機にはAM用6KHz帯域のクリスタルフィルターを搭載しています。
第三局部発振回路動作の解析
28MHz帯及び50MHz帯のFM信号は帯域の狭いクリスタルフィルターを通過せず第三局部発振水晶により 455KHz第三中間周波数に変換されます。
第二中間周波数 8.215MHz-第三局部発振 水晶振動子(HC-49/U) 7.760MHz=第三中間周波数 455KHz(下側ヘテロダイン)
FM送信用 8.125MHz 水晶振動子 (HC-49/U) はリアクタンス変調用としてメイン基板に子亀のような基板 FMユニットがあります。同じく受信用は 8.125MHz から 455KHzに変換用 7.76MHz 第三局発用水晶振動子(HC-49/U)が搭載されています。受信回路はミキサー後 増幅・振幅制限回路をへてFM復調回路ICで音声信号になります。
これらが大まかな周波数変換の動作内容です。その他各バンドごとのBandパスフィルター・クリスタルフィルターなどが通過する回路を電子的に選択しマイコンにより制御されています。その電子的とはPINダイオードにバイアス電圧を加えて必要な回路をスィッチング制御する構造です。リニヤアンプなどと接続において 回り込み現象など無線機内で強電界が発生した場合ダイオードが破壊・損傷となる故障も報告されていました。そのような暖房機兼用高電圧の高下駄は持ち合わせません。高々DC13.8Vの裸足で雀の涙のようなしょぼくれ電波運用です。
下部画像の説明
左上 VCO発振回路 100KHz~54MHz 5バンドに分割発振回路(シールドケース内)
右上 マイコンバックアップ リチウム電池 CR2032
左下 DDS(2) キャリア作成 ダイレクト・デジタル・シンセサイザー(シールドケース内) FQ7928
の上 REF 水晶振動子 33.554,432MHz HC-49/U
の上 PLL IC MB87086APF フラットタイプ 16pin
の右下 DDS(1) デジタルVFO ダイレクト・デジタル・シンセサイザー(シールドケース内) FQ7928
中央下 第二局部発振回路 HC-49/U 60.770MHz 水晶振動子
の右上 主CPU(マイコン) MB90P263PFV-G フラットタイプLSI
右下 マイクロプロセッサーMB89133APFM-G及び 周辺IC入・出力ポートIC群 EEPROM
故障個所の結論を先に述べます
第二局部発振回路 図面 X2001 水晶による発振回路 60.770MHz HC-49/U水晶振動子の不良
この結論となるには長時間悩みました。VCOアンロックになる原因としては様々な回路が絡み合います。不良部品特定に相当の時間がかかってしまいました。不良個所と判明しても交換する部品が手近にありません。部品が手元にある場合は短時間で修復できていたと思います。この部品しか考えられないと最終判断に悩みました。
又この部品は市場では簡単には入手できません。八重洲からの部品供給は打ち切りです。代用品としての手持ち部品もありません。水晶振動子を工作する設備・技術力も持ち合わせません。水晶振動子製造メーカを探し発注しか最良策はありませんでした。電子パーツ販売店なども探しましたが水晶振動子を代用するにも同じ周波数は見つかりません。
真空管オーディオ工作用の測定機類は多数所有していますが 扱う回路が高周波領域とデジタル制御回路です。高周波関連の測定機器類は多数所有しておりません。浅学な知識を絞り出し挑戦しました。
上記画像は今回特別に製造してもらった水晶振動子です。国内大手から小規模の水晶振動子製造メーカーを検索し折衝しましたが 大手製造メーカーでは1個・2個ほどのオーダーには対応してくれません。又チップタイプが主流でありこの無線機に使用しているHC-49/U タイプは製造していません。約30社ほどホームページで確認しましたが数個の実験的なオーダーを受けてくれる製造メーカーはほとんど見あたりません。困ったことです。3社ほど候補として見つけ出しました。
その中で老舗の三田電波㈱営業担当者様と交渉の結果オーダー条件は
最低5個以上であれば受注可能です。
1個,2個単位でも供給は可能ですが5個と納入価格は大きく変わりません。
納期は受注確定後2~3週間程度です。
との回答でした。
技術的な内容を打ち合わせの結果 故障している水晶振動子を送付すれば 不良と思われる水晶振動子特性までチェックの上での製造です。今回5個のオーダーとしました。後は 諸経費・納品方法・支払条件などの打ち合わせです。少量製造にも対応いただき有りがたいことです。
息抜きに少し横道にそれます。雑談
三田電波製水晶振動子は古くから愛用しています。50MHz,1W,AMトランシーバー用 HC-6/U 50.400MHz(50.400MCと記載) のスリーオーバートーン水晶は現在でも部品整理棚に保管してあります。
当時工作した50MHz帯空中線電力1WのAMトランシーバーはこの水晶を使い 高額であった電力増幅用トランジスター東芝 2SC502 です。発振・励振トランジスターはNEC 2SC38,32 でした。トランジスター回路ではうまく変調がかからず励振段にも変調信号を加えた回路構成です。受信機は短波付きゲルマニュームトランジスター8石ほどのポケットラジオに4石のクリコン搭載で7MHz帯受信です。その後愛用していた50MHz帯トランシーバーは井上製 FD-AM3型 です。悪友はトリオ TR-1000型でした。現在も実家の押入れにあります。その後日新電子製 PANASKY MARK6型 に装着して運用していました。パナ6で使用する固定チャンネル水晶は8MHz帯 FT-243型でしたが 邪道ですがHC-6/U型でも運用はできました。現在でも パナ6 は山小屋に保管してあります。終段管は 2E26 変調器 6G-W8 P-P であったと記憶しています。当時TVI・VFOのQRHが発生する無線機で有名でした。重たい鉛蓄電池を持参して標高の高い山頂での運用です。移動手段として移動車両はトヨタ 初期型 パブリカ 強制空冷水平対向 2気筒OHV697cc U型エンジンです。登坂力も弱くエンジン焼け気味となり休憩しながらの移動です。現在の軽四より性能は劣ります。パブリカには金属製後部バンパーに取り付け金具を取り付けスフリング基台+1.5mのホイップアンテナでモービル運用です。その後の自家用車は1100cc初代カローラ,1200cc 2代目カローラ と乗り継いでいます。カローラ時代はFM機 TR7200 144MHzでした。以前は20年愛用したハイエース100系ワゴンでしたが現在はアルファードANH20系です。無線機は搭載していません。パブリカ当時発電機は所有しておらず ディーゼルトラック用バッテリー 容量70A/h で山頂では数時間の運用しかできません。後はQRPのFD-AM3 の出番でした。周辺は障害物・家屋などは何もありません。TVIも気にせずの運用です。マスプロの5エレ八木アンテナを担ついでです。実家ではTVIのためHFしか運用できません。若かりし頃の思い出です。当初50MHz AMのトランシーバーは固定水晶だけでの運用が主体でしたが その後の機種はVFOが付加されました。当時のVFOは周波数の安定度は悪く水晶振動子での運用も多かったと記憶しています。50MHz帯HC-6/U型水晶は高額であり数多くの種類は購入できていません。部品整理棚をのぞいてみますと 50.1,50.2,50.25,50.35,50.4MHzとクリコン用43MHzがありました。全数 HC-6/U タイプです。当時のクリコンは5MHz帯もしくは7MHz帯に変換が主流です。HF機は組み立てキットの真空管式送・受信機で振幅変調方式です。終段管は松下 S2001A(6146B互換品?) でプレート・スクリーングリッド同時変調です。変調器の電力増幅管は 6B-Q5 p-p でした。これも実家の押入れ保管です。今となっては骨董価値のない ガラクタ収集 これが貧乏人の特長 物を捨てられない症候群です。
今回無線機修理に部品調達費用として一万円弱の出費です。これだけの費用で修復できれば技術費は自己での修復ですので 業者並みの技術費用・労務費を時間換算すれば大赤字です。しかし修復作業労務費はとりあえず無料と換算しました。何とか三田電波に支払った金額で修復完了できたわけです。量産品のように数多く同じ部品発注であれは納入単価も下がりますが このような単発的な発注であれば納入単価は高額となるのは当然です。
水晶振動子は精密加工された部品です。発振回路により特性も変化します。数回製造技術者とのやり取りもありました。無線機の発振回路図を送付し検討してもらいました。発注に際し当方より注文書を発行し注文請書も取り交わしました。諸経費として運賃・代引き手数料も含まれた納入価格です。
今回故障診断・修復作業に使用した骨董品測定機器類
デジタルマルチメーター Advantest R6551
周波数カウンター タケダ理研 TR-5142 80MHz
オシロスコープ KIKUSUI COS-5020 20MHz2現象オシロ HP 1202B
標準信号発生器 SSG SANWA MODEL SG-8 30MHz
オーディオジェネレーター Shibasoku AH979G
回路計(アナログテスター) YEW 3201
50Ω疑似空中線 メーカー不明 200W型
通過型電力計 Kuranishi RW-211A
定電圧電源 TRIO PR-602A (Max 25V-3.5A)
蓄電池 GSYUASA PWL12V24 12V-24A (送信テストのみ)
(フローティングチャージモード 13.8V)
FT-920 サービスマニュアルは英文ですが入手しました。マニュアルでは調整・点検に高周波電圧計が必要ですが オシロスコープ波形で実効値換算すれば代用できると判断しています。オシロの波高値(peak to peak)÷(2×√2)=**/V,rms と換算できます。オーディオ用ミリバルは複数台所有していますが高周波領域では使用できません。頭の痛いことです。山小屋では骨董品測定器類ですが HP製100MHzオシロ,ディレー付・安立製スペアナ1.7GHz ・目黒,安立製 SSG・DC~550MHz,50Ω/30W終端電力計 を所有していますがこの10年程必要がなかったため通電・点検をしていません。又自己校正を実施しておらず信頼性がありません。仕方なく自己校正済みのオーディオ用骨董品測定機器を使ってでの修復作業となりました。自宅にもN接栓仕様DC~300MHz200W型50Ωダミーロード・DC~1200MHz30W型50Ωダミーロードは保管してあります。何とか修復・調整できるように周辺環境を整えました。オーディオ用途であればいつでも測定機類は使用できる環境としてあります。高周波を扱うのは久々です。
参考記載 (詳細はサービスマニュアルで確認してください)
サービスマニュアルに記載されていた PLL・VCO 回路点検・調整数値及び測定ポイント
2nd local osc 60.770MHz±1KHz TP1002 0.7V RF/V,rms
TP2005 1.0V±0.1V RF/V,rms
PLL BPF HF TP2004 70mV RF/V,rms VHF TP2001 70mV RF/V,rms
1st local osc TP2001 1.0~8.0V/V,DC 5 Band division
1st local output J2012 coaxial 50Ω loud 0dBm±2dB(RF) at 14.200MHz and 52.000MHz
今回のような水晶振動子故障の場合 良否判定として 100MHz 以上の能力があるオシロスコープ又は周波数カウンターを準備し TP1002 もしくは TP2005 を連続監視すれば判別できると思われる ! ! との結論となりました。長時間動作原理等解析し悩んで修復の結果 あとの祭りですが判明しました。
余談・横道にそれます。修復に使用した測定器などのお話
高周波電圧計(RFミリバル)では測定可能な周波数を明記してありますので測定する周波数が測定可能範囲内の測定器を使用してください。又専用プローブを使って測定ください。プローブ内には検波・増幅回路が内蔵されている物もあります。又RFミリバルでの測定方法ですが 開放電圧測定なのか 50Ω負荷での電圧測定なのかを確認してください。測定電圧は回路インピーダンスにより測定値は違ってきます。オシロスコープでも同様です。通常のオシロスコープ・プローブを使った測定の場合では オシロスコープの入力抵抗はほとんどの場合1MΩ(ダイレクト)又は10MΩ(×10)です。入力容量値として数10PFほど存在します。100MHz以上を測定できるオシロでは低容量プローブとなり高額になります。入力容量値が測定誤差を招くからです。オシロのプローブは消耗品的な扱いです。道楽では新規プローブ購入費用も馬鹿になりません。HP純正では数万円もするプローブも存在します。
注 高周波電圧形計の基準単位は 1mW・50Ω の実効値(rms)電圧が 0dBm です。
計算すると W=I・E より 0.001(W)=E×E÷50(R) より E×E=0.001(W)×50(R) 0.224V/rms の値が 0dBm となります。0dBm とは 50Ωの負荷に1mW 高周波電力が消費するときに発生する電圧を言います。
SSGなどでも同じくdB表示されますがよく見るとdBμとなっています。この基準は1μVの高周波電圧値を0dBμと表示します。負荷抵抗値は明記されていません。1mVであれば電圧ですのでデシベルで表示した場合1000倍ですので60dBμとなります。八重洲のサービスマニュアルでは0dBμ値を0.5μVと記載されており基準電圧を確認しなければ正しい調整とはなりません。1/2倍は-6dBですね。**dBμの単位はは受信感度・Sメーター調整に使われる単位です。
この 0dBm の高周波電圧をオシロスコープで観察した場合では 観測された波形の最大値と最小値との電圧差を見ると 0.224V(rms)×2×√2=0.622V(P-P) の大きさである波形が観測できます。測定結果のオシロ波形より逆算すれば実効値電圧は計算できます。
オーディオ(AF)では 0dBm は 0.775V/rms であり 同じ 0dBm であっても基準値が異なります。1mW・600Ω です。
記載されている数値では実効値を表す rms を省略する場合があります。必ず単位を確認してください。間違った調整となることがあります。dBの表示も同様です。交流電圧は通常実効値電圧を表しますが ほかに最大値電圧・平均値電圧・尖頭値 P-P(Peak to Peak)電圧表示が存在します。オシロ観察では尖頭値であるP-Pの波形電圧値を表現する場合がほとんどです。もしも測定において負荷抵抗値が明記されている場合 その負荷抵抗に発生する電圧を読み取ればよいことになります。又測定においてはテストポイント等での測定に多い開放電圧と負荷接続による電圧では 回路インピーダンスの違いにより読み取れる測定電圧値が異なります。無線機関連調整では同軸不平衡(coaxial)50Ω負荷が多いと思います。余談ですがdBmを表すのにオーディオでは600Ω(平衡)負荷が測定の基準です。
これが理解できればオシロスコープで 実効値換算ができます。RFミリバルを所有していなくてもオシロスコープがあれば調整はできます。オシロは100MHz 以上の性能が必要と思います。旧型機種であればIF周波数はここまで高くありません。10MHz程度と思います。HF帯域であればオシロは20MHzもあれば実用になります。ただ20MHz 程度のオシロであったとしても垂直増幅回路の周波数特性が100MHz近くあれば60MHz測定であれは高域での減衰が少ないため正しい波形表示をするオシロも存在します。通称20MHzのオシロの場合波形観測において20MHzまでは測定誤差が発生しないことが条件であり垂直増幅回路周波数特性はDC領域から相当高域まで伸びていると思います。このようにオシロの特性も確認しなければなりません。スペアナでは広帯域増幅回路が搭載されており 数GHz帯まで伸びているフラットな特性の増幅回路で構成されています。
故障したFT-920は無事修復完了しましたが 故障修理・調整において所有しているアナログ・オシロスコープの性能不足を痛感しました。その意味もあり道楽で入手したデジタルオシロです。骨董品測定器・ジャンク品でしたので故障はしていました。修復後キャリブレーターで自己校正しましたが大きな誤差もなく動作するのを確認しました。性能としては300MHzまで測定できるのと無線機器で扱う50Ω入力に対応しておりこのオシロがあった場合修復時間の短縮となったと思います。
所有していた周波数カウンターの性能は MAX 80MHz であり TR-5142 では性能不足でした。性能外ですが144MHzトランシーバーの周波数は正確に測定はできていました。上記ユニバーサルカウンター(周波数カウンター)は性能向上のため必要と思い中古品を購入です。TR-5142 ではオーディオ帯域は大きな諸問題なかったのですが 100MHz を超えるローカル信号などには対応できません。有力候補としてADVANTEST TR-5823H 又は TR-5823 が本命でしたが結構高額のため 同等品である岩崎通信製を入手しました。機器スペックとしてはプリスケーラを搭載していますので最高1300MHz(1.3GHz)までの周波数を測定することが可能です。アマチュア無線局免許で運用できる周波数はカバーすることができます。上記画像はGPS衛星による10MHz校正作業です。
又このGPS衛星を活用した 10MHz校正基準器の工作は材料費用5000円までの出費で工作できます。部品点数も少なく実用性はあると思います。工作内容は簡単な部類と思いますが ただPCでプログラムの変更作業が必要となります。興味のある方は musenan19.blogspot.com を参照ください。多少参考になると思います。2019/2追記
その後上記画像は新規に工作した10MHz校正基準器です。GPS衛星からの信号による正確な10MHzが出力されます。ただ衛星からの信号では外部アンテナを使わなければ常時室内などでは運用できません。その意味もありOCXO(Oven Controlled X'tall Oscillator ・恒温槽式水晶発振器)による10MHz発振器を内蔵しました。GPS信号による校正の結果 安定すれば周波数変動は10MHzにおいて0.2Hz以下であり0.02ppmの性能です。副標準器と同等性能です。又この基準器でもってユニバーサルカウンターSC-7203 には10MHz外部基準信号入力端子があるため正確な誤差の少ない周波数測定が可能です。ただOCXOは10MHz,-0.5dBm(0.2V/rms)の正弦波出力であるため20dBアンプで増幅しました。
雑談
新スプリアス規格調査報告書にはスペアナ測定データーなど報告書は校正証明書のコピーを添付しなければなりません。しかも校正日から1年以内の校正証明書が必要です。業務用無線設備落成検査と同様と思いますが。総務省お役人様の考える事項ですね。アドバンテストのスペアナですと取引証明用(完成図書とじ込み用)校正証明を取得するには 販売価格の1/10程度 200万円であれば20数万円程校正費用が発生します。不具合がある場合調整・修理費用として別途費用請求されます。しかも旧機種は校正を断られます。おおむね10年前後と思います。
リース・レンタル測定器をレンタルするに使用期間が一か月とか半年とかとして交渉しますが 道楽での個人出費では経費処理ができないため不可能に近いと思います。某高額の精密測定器では校正証明書付き機器をオリックスでレンタルすればびっくりする費用です。新品のしかも高級なアマチュア無線機が購入できます。国の方針として新品のアマチュア無線機を購入促進策と思いますが。
道楽での運用では 所有している骨董品測定機器類は事業所用途とは異なり 完成図書・性能保証に添付する取引証明の必要性がありません。自己満足の世界での運用です。研究所・自衛隊・事業所放出品・リースアップ品を多数所有していますが 故障修理・代用部品などを工作・移植調達し修復調整してあります。自己校正後活用しています。自己校正の基準となる測定器は同じく骨董品でありもちろん校正証明は取得しておりません。最低YEW製アナログ測定器0.5級品(class 0.5)を使います。又校正に必要な校正器も作成します。適当な間隔で自己校正作業実施後 工作・修復作業などに数多く使用していますが致命的な諸問題は発生していません。
今回故障診断において 時間が経過することにより症状が発生していることから 電子部品の温度変化による故障が原因として過去からの経験を踏まえ調査しました。
まず実施したのは症状発生前後での各部品ショックテストです。ショックテストでX2001 の水晶振動子が不安定動作時ショックノイズが発生することが判明しました。最初は水晶振動子の半田付け不良と思われ再ハンダ付けしましたが改善されません。水晶をラバーで接着固定しても同様です。
次に電子基板故障診断でよく使用する冷却スプーレーの散布です。今日では使用禁止されている骨董品急冷材(R-12)を使って水晶振動子を冷却すると症状は発生しなくなります。それ以外の冷却材としては清掃消耗材の エチルアルコールを不良と思われる部品に滴下です。アルコールの気化熱で冷却することができます。
その時点で発振周波数の測定およびオシロスコープ観察では大きな異常個所は見受けられません。オシロの周波数特性が低いため 詳細の波形観測ができません。この時程100MHz以上のオシロが必要と思いました。・・・・骨董品真空管式オーディオアンプでは10MHzもあれば実用となります。
この水晶振動子の不良であると確定・判断には相当時間が経過しています。なぜならPLL,VCO回路解析に多くの時間を費やしています。又このような水晶振動子単体の故障経験はありません。言いたくない言葉ですが近頃よく耳にする 想定外の故障 です。これが診断に手間取った理由でもあります。
その後三田電波㈱に技術的な相談をして特別注文の水晶振動子を発注しました。
注文確定後約2週間ほどで水晶振動子が到着し 基板に取り付けて長時間エージングを実施しましたがその後症状は発生していません。3日後ようやく修復完了と判断しました。時々症状故障の場合 修復後正常動作確認作業もエージングを含め長時間必要です。
故障した水晶振動子 不具合内容の推察
水晶振動子内部の温度変化による振動子のマウント不具合と推察します。通常水晶振動子はショックノイズは発生しません。水晶振動子の素子取り付け構造に問題があったと推察できます。水晶振動子単体での故障事例は少ないと思います。故障した水晶振動子にはメーカートレードマークとして Hz とプリントされています。このプリントされていた名称で検索しましたが製造メーカーは特定できませんでした。すでに廃業されている製造業者かもしれません。
ヘルツ㈱水晶振動子製造メーカーは大手京セラに子会社として2006年10月に吸収合併となり法人としては消滅していました。現在の会社名は京セラキンセキヘルツ㈱となっています。
金石舎も三田の水晶と並び昔のアマチュア無線家には懐かしい水晶振動子メーカーです。
設計者と故障修理者では思考方法が異なると思います。今回のように部品の構造も理解できないと故障診断はできません。又様々な故障原因・壊れ方も推察できなければ同様です。実際にほかの部品故障においても推察力・洞察力も日ごろから経験しなければ迷路に迷い込んでしまいます。過去によく似通った事例がなかったかなども含まれると思います。時には故障した部品を分解して故障原因を確認・追及することもあります。一種のこだわりです。水晶振動子でのこのような故障事例は初めての経験です。 1974年6月リリース 山口百恵 ひと夏の経験 をふと思い出しました。CDは所有しています。
当時製造された FT-920 シリーズは国内外とも結構な数が製造・販売されていると思います。量産機であるからこそ 同一の故障が発生していると推察します。先日も部品取り機入手のためインターネットオークションで検索しましたが 自分の思っている落札可能金額より結構高額な価格で落札されています。同じ故障症状の FT-920 が取り引きされていました。同じ故障個所のように思います。この故障状態は水晶製造メーカーの製造工程において製造方法が同じであれば同じ故障を引き起こすことも推察できます。多数の人が競り合い高額となりましたので入札には参加しませんでした。自己所有分のFT-920が修復できましたのでオークションサイト落札での部品取り機入手は却下となりました。
10年以上となる機器ですので 機器減価償却価格計算により 当時購入価格の1/10程度であれば落札してもよいと思っていました。とは言え結構市場では購入希望者が多い無線機であると思います。
故障と判断した水晶振動子の検証
FT-920 故障修復完了後入手したデジタルオシロ DL2140B を使って故障状況の再現検証です。
今回の故障は第2局部発振回路の 60.770MHz の水晶振動子でした。今回故障状況の確認作業として無線機の使用されている回路を別基板に組み立て 環境試験をしましたところ不良症状が確認できました。
上図は第2局部発振回路を蛇の目基板に再現です。現物のFETはチップ型でしたが代用品として2SK192Aを使いました。共振回路の高周波トランスは6φコア付コイルの工作であり 共振コンデンサー15PF,0.42φ PEW線を8t巻センタータップ付 2次巻線0.42φ PEW線を2t巻として回路を組み立てました。この同調回路を工作に当たりDELICAのディップメーター WB-200型 で定数を確定しました。
この発振回路では共振回路が同調していない場合発振しません。ダストコアを回転していくと発振開始する場所から波形がpeakとなり まわしすぎると発振停止となります。最良点の調整はオシロスコープ波形観測か回路電流により最大値に調整しなければなりません。コアの回転角度としては±90度以内です。回路電流は3mAから0.5mA程度増加します。+12Vからの供給側には100Ωの金属皮膜精密抵抗両端の電圧を測定すれば電流値換算ができます。
画像の下部は水晶振動子全体を加熱するために工作した部品です。0.2tの銅板を加工しHC-49Uをすっぽり包み込むための銅板加工品です。その銅板に板抵抗器を発熱体として水晶振動子を加熱する構造です。DC:5V 電源により 0.5W 前後の熱源としました。手で継続して触れることができ続ける温度になりました。OCXO のようなオーブン構造です。
このような故障診断の場合 回路動作についても理解していないと故障診断はできません。
上図は再現した水晶発振回路の測定波形です。
2次コイルに負荷として周波数カウンターとオシロスコープを接続したときの波形です。使用したオシロスコープの水平時間軸は 10n sec/DIV(100MHz/DIV) であり 垂直感度は 500mV/DIV です。測定プローブは10対1を使用していますが 本体にプローブ倍率をプリセットしてありますので 波形を測定するにアナログオシロとは異なり電圧換算する必要はありません。今回の検証回路での波形観測は 正弦波 2.2V p-p の波形といえます。1サイクル分の時間軸は 約16n sec ですので周波数は f =1/10n sec より 62.5MHz との計算結果から 約60MHzの正弦波であることが判明します。
今回測定に使ったオシロでは 10n sec/DIV が通常モードでの最速時間軸です。メーカー公表 表記上300MHz 能力のオシロですが Zoom 機能により拡大モードモード最速時間軸 50p sec/DIV であるためオシロとしては 300MHz の 能力保証があるわけです。
同じ波形を 20MHz のブラウン管式オシロスコープで測定しましたが正確な波高値は測定できませんでした。今回の診断に時間がかかった理由です。20MHzのオシロではここまで鮮明な波形観測はできません。性能能力外です。
サービスマニュアルによればこの発振回路でのスペックは 2nd local osc 60.770MHz±1KHz です。周波数観測は SC-7203型機で 60.769212MHzを測定しました。約800Hzの誤差であり規格内です。
上図は故障部品として取り替えた Hz 製 60.770MHz HC/49U です。銅板を水晶振動子の周囲にハチマキ状に取りつけ 銅板に平板金属皮膜抵抗27Ωを直列接続としてDC 5.0V の電源により水晶振動子を加熱しながら動作試験です。抵抗器での電力は 電流92mA/DC:5V から0.46Wの発熱により水晶振動子を加熱します。約40分ほど経過したときに発振停止となり出力波形は無しとなました。症状が確認できました。銅板を取り除くとしばらくすると出力波形は正常となります。
その時の水晶は振動子の温度ですが指先で連続して触れ続ける温度であり 4~50℃前後と思います。
FT-920で1時間ほど通電後の水晶振動子付近の温度です。メイン基板は無線機の底の部分に取り付けられており ファイナル部の温度上昇する個所とは異なり 放熱効果の悪い部分にメイン基板はあります。やはりこの水晶振動子の温度変化による発振停止でした。
まとめ
今回の故障診断・修復作業については 注意事項としてメイン基板の修復には細心の注意をしてください。チップ部品が数多く採用されており ICもフラットパッケージタイプです。それと各基板間を接続している部品にフラットケーブルが採用されており簡単に壊れてしまいます。特にコネクターの破損に注意してください。フラットケーブルの接触面は素手で触れてはなりません。今後接触不良を引き起こすことが推察できます。今回何度もメイン基板を取り出しての半田付け作業が数回発生しましたが他の箇所の連鎖故障もなく無事修復作業が完了しました。無闇に数多くの部品交換はしません。交換した不良部品としては たった一個の水晶振動子だけです。落雷・落下破損・水害などの事故・天災被害品でない限り多数箇所故障は通常故障であれば発生しないと思います。連鎖故障は別ですが。発振回路の調整は実施していません。SVR・トランスなどの調整箇所は無闇には調整はしません。ほとんど触れません。異常がある場合は別ですが。もしも調整する場合は調整前の状態に戻せるのが条件です。素人・エンジニアもどきは無闇に触りまくります。これが最悪の こ・わ・し・や です。メーカーサービス部門の修理担当者が一番遭遇したくない故障修理です。修理時間が長時間となり技術者からの立場としては内部を触れてほしくないわけです。最悪修理拒否です。骨董品オーディオ機器テープデッキのTEACでは内部を触れずに修理依頼が条件となっています。そのため旧機種では部品だけの販売はされていません。メーカー修理のみの受付です。
オシロ観察では 故障前の正常動作測定値と比較してもほぼ正常値です。PLL周辺調整も実施していません。各テストポイント点検ぐらいです。特注水晶振動子の特性が合致したようです。各関連した回路は正常に動作しています。動作原理を元に故障原因を追究し故障個所の診断には結構手間取りました。事業者であれば営利を追求されますが 営利とは無縁の道楽作業であるからできた技です。
的外れに無闇やたら周辺部品を多数交換する 部品チェンジニア 存在するのも事実です。サービスエンジニアとしては 短時間に多数の部品交換で完成させるエンジニアと 故障した部位だけ交換完成するエンジニアに2分されると思います。前者は空中配線・基板パターン切断・特に汚い半田付けで目も当てられないような修理です。その後修理を引き継いだ場合修理意欲も半減します。交換した部品をすべて元に修復後 真犯人は別の箇所であり故障個所の部品交換数は多くありません。欠陥部品を多用した機器は別ですが。その例としては安価な海外製造部品を使っての海外製造品、輸入部品の電解コンデーンサー容量抜け、数十年以上前に製造された半導体・IC類のマイグレーション・ウィスカ症状による不良などです。このような故障が多発する場合 数多くの部品交換することもあります。特に骨董的な電子機器において時々発生しています。おおむね家電電子機器などの寿命は10年ほどと思います。そのころになるとメーカーでは 部品保有年限が過ぎており修復できません。買い替えてください。・・・・で おしまい。今回故障した無線機の八重洲も同様です。
一部有名なオーディオ専門メーカーでは修復費用の対価は別として 骨董的な商品であっても修復してくれる場合もあります。とりあえずエンジニアが修復可能かを判断するため修理受け付けてもらえます。
今回の故障事例では 少量発注ですが新規に部品を作成してもらえる製造業者を見つけ出せたため無事修復完了できたわけです。
無銭庵 仙人の独り言
骨董的なオシロスコープの自己校正
下記画像はオシロスコープによる 20MHz 校正基準器の波形観測です。工作した20MHz校正基準器は水晶振動子とロジック IC SN74HCU04 による発振回路の信号観測です。アナログブラウン管 2現象オシロスコープは 菊水 COS 2020 20MHz能力の観測波形です。時間軸は0.2μsec/DIV で測定しました。
通常アナログオシロの場合 20MHz 能力といえば 1/DIV 格子目盛の一升目に一サイクル分の波形を投影することの能力を言います。例えば最速水平時間軸が 0.5μsec/DIV の場合の周波数を求めると f=1/t より 1/0.5μsec=2MHz と計算できます。おかしいですね20MHzとはなりません。ところがオシロスコープには10倍の拡大モードがあり最速時間軸は 0.02μsec となります。この場合は 20MHz/DIV となります。ただ通常のブラウン管オシロの場合画像は通常の測定より観測画は暗くなります。
今回測定に使用した COS 5020型機は最速時間軸が 0.2μsec/DIV の仕様であり周波数を求めた場合 5MHz/DIV になりますが拡大モードでは 50MHz/DIV と判明します。しかし広帯域増幅特性が20MHz以上の性能保証がないからです。メーカー保証特性としてDCから20MHzということになります。下記300MHz能力のデジタルオシロと比較すると観測波形が異なります。アナログオシロは高域特性がよくありません。下記画像から判明する事柄は 観測波形1サイクル分の時間は約2.5×0.02μsec/DIV であることから1サイクルの時間は 0.05μsec と読み取れます。周波数に直すと 20MHz の信号であると判明します。波高値は約5/DIVですので 1/DIV=0.1V 10:1プローブを使って観測していますので電圧は10倍すると 5Vp-pの歪を含んだ正弦波波形であると判明します。
下記画像は YEW(横河) DL2140B での上記アナログオシロと同様の時間軸及び電圧軸で観測した画像です。このデジタルオシロ測定入力端子は4系統(4-ch)あります。4現象ということができます。上記で観測した正弦波波形に似通っていません。上下には過渡振動の波形が観測できます。使用したデジタルオシロは近年に製造された機器ではありませんがメーカー公称300MHz能力のオシロ観測波形です。画像周辺には測定環境データーが投影されています。
下記画像は DL 2140B 通常モードでの最速時間軸です。周辺の測定データーでは 10nsec/DIV と表示されており nsec/DIV単位は 0.01μsec/DIV です。観測波形1サイクル分の時間軸は 5×10nsec/DIV ですので波形の1サイクル分の時間は 50nsecと判明します。周波数に換算すると 20MHz の信号です。電圧は6.2Vp-pと読み取れます。歪波形の山数を数えると3個であり 60MHz 3倍の高調波成分と判明します。 20MHz校正基準器 は 5V の電源で動作していますが歪波形によりp-pの-値は電源電圧より高くなっています。ズーム機能での最速時間軸は 50psec/DIV ですので周波数表示では20GHzですが性能として300MHzの能力表示です。このように高い周波数であっても正確な波形観測ができる測定器ということができます。
マーカーでの表示は -50nsec と表示されていますね。観測波形1サイクル分です。周波数換算すれば20MHzですので時間軸は狂っていないと判断できます。
このようにオシロを使っての波形観測前には校正器を使って動作確認をお勧めします。校正基準器は簡単に工作することができます。電圧軸校正は1KHz 5Vp-p方形波でプローブの校正を兼ねて作業します。
上記画像には違いが判明すると思います。今回 FT 920 修復において測定器の能力不足であったため修復に長時間格闘となったわけです。諸先輩のような最新型である 横河・テクトロ・アドバンテスト などの近代的な高額である測定機器は購入する財力はありません。骨董的な測定機器であっても自己校正により精度・確度を把握すれば骨董品測定機器類であっても十分に活用できています。
FT-920 参考として内部構造を画像で御覧ください。
前面の操作・キーボード部は故障しておらず他の方々がフォトアップしていますのでそちらを参照願います。
ただメインのVFOつまみ軸部のグリス切れのため回転はスームズに動かなくなりました。プラスチック軸受けと軸は金属であり注油するグリスはプラスチック部を劣化させない物を使わなければなりません。注油グリスは信越のシリコングリスを注油しました。現在つまみの回転はスムーズとなっています。
近代に製造された機器においては安価なプラスチックを主体とした構造品が多いと思います。数十年以上使用に耐える構造ではありません。製品重量で商品の優劣は判別はできませんが近代製造品程軽量となっています。機能性は良くなっていますが反対に寿命は短くなっていると思います。若者の必需品 スマホ・タブレット端末などは数年もすれば旧機種となり買い替え需要となっています。
この大量消費時代に逆らって 骨董品機器を骨董品測定機器を使って初期性能を維持する作業が道楽作業です。となれば骨董品測定機器類まで修復・改造・調整する事も時には必要となります。
現在使用しているガラケーは購入後7年近く使用していますがさすが Maid in JAPAN 安定した動作で故障知らずです。キャリヤからはスマホ買い替えメールばかり送られてきますが スマホに買い替えるメリットがありません。デメリットは通信費が高額となるからです。最低緊急連絡電話と簡単なメール交換ができれば事は足ります。大量・高速データー通信は光ファイバー接続PCに軍配があります。未来を支える若者達はスマホ症候群となっている時代です。近代人種はスマホを取り上げた場合気が狂うと思います。歩きスマホ・電車・バスの中で何をしているかは不明ですが。SNSで遊んでいるか ゲームに集中していると思います。困った時代が到来しました。通信事業社 儲け頭は国内三大キャリヤと思います。反対にアマチュア無線家は衰退の道を歩んでいます。
上図ではシールドケースに収められたDSPユニットは写っておりません。取り付け箇所は画像の右上になります。DSPユニットが取り付けられている場合白色フラットケーブル下の領域にあるメインCPU周りが目視できません。又メイン基板点検・修理には邪魔になります。FMユニットは中央左寄りにある茶色の基板でFM変調用と第三局部発振水晶振動子(HC-49/U)が取り付けられています。中央上部左寄りに狭帯域水晶フィルターが取り付く場所ですが一番上部はSSB用でその下側はオプションフィルターが取り付ける場所ですがCW用は実装していません。空きスーペースでありその下にAM用を搭載しています。各狭帯域クリスタルフィルターがFMユニットの上部になります。
半田付け基板面はすっきりとしています。しかしチップ部品であるダイオード・FET・TR などは基板に接着剤で固定されたうえ 自動半田付け機械により半田付けされています。画像の右上にシールド板がある個所がVCO発振回路です。その左横が各周波数帯域に対応したBandパス群のフィルターです。
小型の無線機とは異なり内部には適当な空間が結構あります。特にファイナル部は発熱も多く大型冷却ファンが採用されているため ファン回転時には静音と思います。コンパクトに組まれた無線機では放熱状態も悪く小型冷却ファンが使われ高速回転するため結構耳障りな機種も存在します。近年使っているPCの電源も昔と比べ静音設計となっています。大型ファンで内部温度に応じて回転数を制御し静音電源が主流です。長時間に渡るタヌキワッチ状態では強制冷却ファンはほとんど回転しません。この機種では温度上昇による可変速回転制御の冷却ファンは搭載されていません。
無線機の13.8V直流電源ですが市販品のAC-DCコンバーター方式を使った場合は必ず冷却ファンにより耳障りとなります。静音ではありません。そのため現在使用している直流電源はファンレスとして設計したため非常に静音となっています。その代償として大きな放熱板が必要となっています。中には冷却ファン音が大きいことを自慢している因業爺さんたちも見かけます。ヘンリー製 ? アルファー ?
上図はアンテナチューナー制御基板です。SWR値検出回路からの信号で各リレー・VC駆動モーターを制御しています。フラットICのマイコンにより制御しています。
上図画像左下の部品2個はモータードライブ可変容量コンデンサー(バリコン)です。1KV耐圧のタイトバリコンと思います。
アンテナ切り替えリレーはオレンジ色の小型でした。画像中央上部です。SWRデーターを収集し 水色小型リレーで各コイル・各コンデンサーを切り替えます。同調コンデンサーは高耐圧のディプマイカコンデンサーが採用されています。
上図中央はDSP LSIです。右上には懐かしいEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)が使われており専用プログラムで動作していると思います。
現在送信用(TX)DSP回路は使用していません。このDSPユニットはオーディオ特性は良くありません。MP3ファイル形式の音質より悪いと思います。TX用DSP出力端子に切り替えスイッチを設け 8チャンネルプロ仕様オーディオ用ミキサーアンプよりの不平衡600Ω 0dBm 出力を直接変調用音声信号として入力し運用しています。アナログ信号ですがDSP音声変調信号と比較して各局からのレポートではアナログのほうが良い音質とのレポートをもらっています。現在TX用DSPユニットは切り離しての運用です。DSPの音質が良好とは思えません。現在のDSP信号は改善されているようです。20年前の設計ですの納得できます。今しばらくはアナログ信号でもって運用予定です。
画面中央上部の2ターンコイルはファイナルアンプ13.8V回路の電流検出用シャント抵抗です。左上部のシールドケースは内部に-12V DC/DCコンバーターで-12Vを作成します。中央下部は可変型4端子+12V定電圧ICです。サービスマニュアルでは+12Vの調整値は 11.5V±0.1Vとの調整値です。ご注意ください。
今回直流13.8V入力接続端子に電圧逆接続防止のためプラス側端子にはカソード マイナス側端子にはアノードとなるようにダイオードをも挿入しました。逆接続した場合ダイオードが短絡となり保護ヒューズが断線し無線機内部には逆接続電圧が加わらないような構造としました。高額な電力増幅FET保護・各回路保護としてです。電源逆接続事故は回避しなければなりません。画像右下参照
メーカー修理と業者修理の違い
今回の無線機は八重洲という会社が社外品の各部品を寄せ集め 製造工場で組み立て調整後検査を経て完成品となり販売していると思います。自社での製造部品はごく限られたものと思います。使われているほとんどの部品は社外品です。メーカー修理業務では生産されたときの新品部品もしくは後日再生産された純正部品を使用しての修復作業です。そのため通常故障しない部品まで数は少量ですがサービス在庫として保管しています。メーカーが隠ぺい工作をしている多発傾向部品は多数在庫していると思います。ほとんどの場合保管される部品は機能部品です。汎用部品の場合はいつの時代であってもアフターサービスは可能ですが外観部品などはほとんどの場合数年で供給打ち切りとなります。特に外観プラスチック成型部品などが該当します。理由は金型がないため再生産できません! といわれます。あくまでも機能を維持するための部品が保管されているわけです。経産省からの指導により機能部品にはメーカーでは長くて10年ほどは保管されていますが それ以上となると部品調達ができないという理由で修理拒否となります。メーカーからは買い替え推奨されます。ベストセラー品で製造時期が長期間の場合のみ生産終了後との規定により部品は保管されますので多少サービス受付可能期間は長くなります。メーカーでは部品保有年限が過ぎれば在庫部品は廃棄処分となります。損失計上が発生します。使用しない部品保管にも経費が掛かっているわけです。サービスパーツは諸経費が加算され高額な価格に設定されています。ただし特売品に見受けられる長期間流通在庫品・販売店長期在庫品などでは 生産終了後の機能部品供給期間が建前となっていますので 購入後4~5年ほどでも部品打ち切りの可能性はあります。故障がなければ儲けものですが。
メーカーには製造物責任法という足かせがあります。PL法です。修理受付拒否が理解できると思います。
又近年の商品ではACアダプター(別電源装置)を使う商品が多いと思いませんか。これは電気用品安全法(PSE)の規制を逃れるためです。この無線機では商用電源(AC100V)直接では動作しません。DC13.8Vで動作するため無線機自体はPSE法を厳守することはありません。そのためPSE法の対象となる別電源が必要なわけです。無線機リニヤアンプにおいてもしかりです。本体とは別のPSEマークの付いた電源装置が用意されています。
ところが修理業者の場合を考えてみます。メーカーのように製造時の新品部品で修復することが原則ですが メーカーからの部品供給不能の場合などは 新品代用・汎用部品の調達及び改造・特殊部品製造業者より調達・中古(再生)部品を使用して修復する場合もあります。これがメーカー修理との大きな違いです。たぶん入手困難な部品としては専用にプログラムされたマイコンなどのカスタムIC類と思います。部品取り機として故障した機器であっても入手し移植修復することもあるわけです。ユーザーからの修理預かり品で見積もりに必要な経費を請求する業者も存在します。その後修理キャンセルなどが発生した場合などユーザから現地廃棄処理の場合ですと その故障した機器を部品移植用として保管されることもあります。これが再生部品の入手方法でもあるわけです。数多くの修復されている業者程このような移植(再生)部品を数多く所有していると思います。ところが面白い現象があります。故障個所が同一箇所であるため修理用として使う部品が同じであることも発生します。それは設計・品質不良による多発傾向の故障と思いますが。又多発する場合は欠陥です。事故が伴えばリコール問題です。その反面古い故障品が修復できる確率が高くなるわけです。ユーザーにとっては修復できない場合はその機器は使用できませんが 代用品・再生部品で修復ができる場合は故障した機器が生き返るわけです。後は修復費用の対価を天秤にかけるのは所有者です。
このように骨董品機器となるとクラッシックカー修復と同様に新規に部品を加工・工作しなければ機能が回復しないことも考えられます。電子部品では50年前の部品であっても機能的に同じ性能の部品は現代でも調達は可能です。反対に特性は良くなっていると思います。コンデンサー・抵抗類が該当します。真空管は数は少ないですが海外で製造されています。一番厄介な機能部品はプログラムされたカスタムLSIは入手不能に近いと思います。汎用半導体は何とか代用品を見つけることができます。電源トランスなどは新規に製造してくれる事業者も存在します。今回不良であった水晶振動子は新規に製造可能な製造会社を見つけ出すことができました。
再生部品を扱うには一番厄介と思われる部品は フラットパッケージのマイコン関連です。最悪取りはず時 部品を壊してしまい(足折れ)再使用できません。その時に基板パターンも壊すことがあります。取り外す半田付け箇所の足数は100本近くなる部品もあります。故障した部品を取り外すには非常に難易度が高い作業です。機械半田付け作業前には基板と部品は接着剤で固定されています。それに100本近くの足を一気に半田付けを取り外すという困難な作業が待ち受けています。チップ部品の抵抗・コンデンサー・半導体はほとんど再使用できません。又修理が完了しても正常に半田付けが完了しているかの確認作業も大変です。ルーペ・顕微鏡が必要な場合も発生します。職人的な技術が必要となります。基板も集積度が上がり部品単体の修理ができない構造が増えました。たった10円の部品が故障であったとしても 基板・アッセンブリー交換となり 供給される部品単価が高額となるのが現代の電子機器です。こうなれば高度の技術を持ったエンジニアはあまり必要とはなりません。基板チェンジニアの仕事となり 修理価格が商品価格よりも高額となることもあり得ます。
修復した FT-920 の場合 故障した部品は現在でも特別(カスタム)注文が可能な部品でした。汎用部品のように簡単かつ迅速に入手できる部品ではありません。使用されていた水晶振動子製造メーカー(Hz)とは異なりますが 同等の部品を作成している製造メーカーを探し出したわけです。水晶振動子の外形は特殊なものを除き規格品でもあるわけです。HC-49/U の外形です。ただ使用用途により製造される水晶振動子には同じ規格品とは限りません。発振回路・使用用途など技術的な打ち合わせができたため目的とする部品が入手できたわけです。誰でもできる簡単な作業内容ではありません。ご承知おきください。
もしも修復失敗の場合約一万円弱をどぶに捨ててしまうことにもなるわけです。パチンコ・競馬などの公営ギャンブルでの損失に比べたら少額の投資と思いますが。自由に使えるポケットマネーは雀の涙ほどしかありません。又ギャンブル・バクチ的な道楽・趣味は持ち合わせません。今回のようにあまり費用をかけず骨董品機器を自力で初期性能を維持できるように機能回復するための道楽作業における修復内容記述です。
故障をきっかけにいろいろインターネット上を検索しましたが どうもディスプレー数字がフラッシュする(PLLアンロック)故障が発生しているようです。PLL部の総合調整で修理できたとの動画での報告がありました。詳細の調整過程説明はありません。水晶振動子・FETとL,C共振回路での発振構造ではその他の回路部品故障確率は低いと思います。又経年変化による調整ずれは発生しにくいと思います。動画では調整ずれが多いと言っていますが。近年のデジタル制御機器では極端な調整ずれは発生しません。もしもずれる場合は回路設計不良か回路に使われている部品の選択間違いと思います。そのずれた原因も調査・追及せずにごまかし修理と思いますが。原因は今回の故障と同様に水晶振動子の不良と思います。水晶振動子のアクティビテイーの劣化と判断しています。一時治ったとしても再故障確率は高いと思いますが。あくまでも個人的な結論です。柳の下にどじょうは2匹以上いると思います。散発的に同様の故障は発生していると推察出来ます。八重洲では製造コスト削減策として水晶振動子を1円でも安価な製造業者に発注したことが原因かもしれません。あくまでも憶測です。
電波法の目的
この法律は、電波の公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的とする。
電波法施行規則 第三条十五 第四条二十四(アマチュア局)
アマチュア業務とは、金銭上の利益のためではなく、専ら個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう。
もうしばらくはこのトランシーバーを使い隠れ山小屋でのお遊びが継続できるようになりました。新品の機器購入はしばらく延期とさせていただきます。
上図画像は実働するHF帯真空管式トランシーバーです。下段左より FT101 後期型・右 FT101B ・上段左 FT101E ・右 FT101ZD です。一応全機種稼働しますが無線局免許としては 電波管理局(現総務省総合通信局)平成34年度(令和4年)12月から適応となる新スプリアス規格を取得したトランシーバーは FT101ZD のみです。他の3台は終段管が 6J-S6C パラレルであり現在保守管として手持ち在庫がなくなりました。今後の運用に支障があるためお飾りとなっています。東芝製 6J-S6C の新品が入手難であり中古管も出回っていますが信頼性に問題があると思います。FT101ZD は終段管が GE 6146B パラレル仕様であり終段管保守用途としてUSA軍箱入り未使用管6本を保有しています。
現代の環境ではこのトランシーバー FT101ZD を運用に際しては内蔵VFOの周波数ドリフトが多く使い物になりません。工事設計書にはデジタルVFOを増設設計し分解能が1HzのDDS制御5MHz帯VFOを追加し デジタル制御無線機と交信しても周波数変動はほとんど発生しません。無線機に初期から搭載されている各Band用水晶発振器の周波数変動が目立つようになりました。
新スプリアス規格対応機種への変更申請
FT101ZD は第五送信機・新スプリアス規格対応機種として登録してあります。今後の保守が可能な状態です。新スプリアス規格機器として 旧登録機種 FT101 から FT101ZD に変更申請の結果 局免許を取得できました。時々通電・動作点検として電波を自由空間に放出し交信しています。今回修復した FT920 は旧スプリアス規格の機種であり 令和4年12月以降継続して使用できません。第一送信機として詳細添付資料を作成し新スプリアス規格機種として変更申請により新スプリアス規格はクリアとなりました。この先今しばらくは運用可能な状態となっています。TSSでの新スプリアス規格対応機種保証認定には提出後2か月強の期間がかかりました。その後の電管への変更電子申請は免許が下りるまで1か月かかりませんでした。
別の道楽・趣味である真空管式オーディオ機器については アマチュア無線のような国からの法的な規制はありません。アマチュア無線については運用に際し国からの免許取得が必須となり衰退していく道楽と思います。
新スプリアス規格対応により今まで登録し運用していた無線機は簡単には継続申請できません。現在運用ができている JARL認定機種・旧技適機種については継続免許のハードルは高いと思います。新スプリアス保証認定においては 機種銘板・製造番号・旧技適番号などの提示が必要な場合もあります。JARL認定機種・旧技適機種などは自作機と同様の扱いとなります。工事設計書など添付書類・資料を揃えるに結構な手数(日数)がかかります。同様にVHF,UHFの無線機も旧技適・JARL認定機種でしたが複数の書類等を作成・添付し新スプリアス規格対応機種として登録 全数新スプリアス規格対応の免許をが得ることができました。電子申請の記載項目は記入に際し理解に苦しみ難解でした。何とか電子変更申請完了です。詳細な記入見本を探しましたが見つけ出せんでした。
令和4年12月までに多数局は旧機種運用免許・ペーパー免許のアマチュア無線局は簡単に新スプリアス対応処置ができず 廃局 になると想像できます。
一番手間のかからない無線局継続には4級(旧電話級)アマチュア無線従事者免許所有の方であれば IC7300S(HF帯10W・50MHz帯20W機) 3級(旧電信級)アマチュア無線従事者免許所有であれば IC7300M(HF帯50W・50MHz帯50W機) 1級・2級アマチュア無線従事者免許所有であれば IC7300 (HF帯100W・50MHz帯100W機)を導入し変更申請することをお勧めします。ただし移動局として申請は空中線電力50ワット未満です。100ワット申請の場合固定局で申請が必要です。所有している無線従事者免許の操作範囲に合わせての無線機選択が必須となります。簡単に総務省に電子申請の変更申請により局免許取得できると思います。インターネット申請ができない場合 電管に従来の紙ベースの書類作成後提出する必要があります。IC7300系の無線機は新スプリアス規格を満足している無線機です。複雑な書類等を作成する必要はありません。ただ10数万円の機器購入費が必要と思いますが。各個人判断ください。八重洲の場合 FT-991A (HF帯~430MHz帯) がお勧めです。昔のからラジオ少年継続者 年金生活者 廃局 ? ! ! !
衰退状態のアマチュア無線の道楽はいつまで続くやら…?
上図は製造後50年以上と思われる米軍真空管式受信機 R-390A/URRです。
機器銘板を見ると COLLINS RADIO COMPANY となっており数少ないメカニカルフィルターで有名な会社コリンズ製です。
製品重量は30Kg を超える機種であり 点検修理時には苦労します。一応動作しますが初期性能は出ていないと思います。
心臓部であるアマチュア無線では局部発振用 VFO と呼ばれますが この受信機ではPTOと呼ばれるユニットです。アマチュア無線家の憧れと呼ばれるKWM-2より高精度のPTOが搭載されています。発振回路の真空管ヒーターはバラスト管と呼ばれる部品でヒーター供給電圧・電流を制御する部品が使われています。PTOユニットはコリンズ製ではありません。
通常はシールドケースに収められているコリンズ製メカニカルフィルター群です。異なる帯域のメカニカルフィルターが4種類搭載されています。現代にこれと同様のアナログ的な受信機の製造は困難と思います。真空管とメカニカル動作で1KHzが直読できる優れものです。
上記記載事項は道楽作業における個人的な記述内容です。間違った解釈が記載されているかもしれません。あくまでも参考程度の記述内容であることをご理解ください。多少とも記述内容を活用いただければ幸いです。この作業は自己責任での作業内容です。
by musenan sennin
その後帯域の狭い8MHz帯クリスタルフィルターを通過後増幅しAM復調・SSBのキャリヤ戻しリング復調器を経て音声信号となります。8MHz帯SSB用クリスタルフィルターは初期より実装されていますが 8MHz帯CW用・AM用クリスタルフィルターはオプションです。この無線機にはAM用6KHz帯域のクリスタルフィルターを搭載しています。
第三局部発振回路動作の解析
28MHz帯及び50MHz帯のFM信号は帯域の狭いクリスタルフィルターを通過せず第三局部発振水晶により 455KHz第三中間周波数に変換されます。
第二中間周波数 8.215MHz-第三局部発振 水晶振動子(HC-49/U) 7.760MHz=第三中間周波数 455KHz(下側ヘテロダイン)
FM送信用 8.125MHz 水晶振動子 (HC-49/U) はリアクタンス変調用としてメイン基板に子亀のような基板 FMユニットがあります。同じく受信用は 8.125MHz から 455KHzに変換用 7.76MHz 第三局発用水晶振動子(HC-49/U)が搭載されています。受信回路はミキサー後 増幅・振幅制限回路をへてFM復調回路ICで音声信号になります。
これらが大まかな周波数変換の動作内容です。その他各バンドごとのBandパスフィルター・クリスタルフィルターなどが通過する回路を電子的に選択しマイコンにより制御されています。その電子的とはPINダイオードにバイアス電圧を加えて必要な回路をスィッチング制御する構造です。リニヤアンプなどと接続において 回り込み現象など無線機内で強電界が発生した場合ダイオードが破壊・損傷となる故障も報告されていました。そのような暖房機兼用高電圧の高下駄は持ち合わせません。高々DC13.8Vの裸足で雀の涙のようなしょぼくれ電波運用です。
下部画像の説明
左上 VCO発振回路 100KHz~54MHz 5バンドに分割発振回路(シールドケース内)
右上 マイコンバックアップ リチウム電池 CR2032
左下 DDS(2) キャリア作成 ダイレクト・デジタル・シンセサイザー(シールドケース内) FQ7928
の上 REF 水晶振動子 33.554,432MHz HC-49/U
の上 PLL IC MB87086APF フラットタイプ 16pin
の右下 DDS(1) デジタルVFO ダイレクト・デジタル・シンセサイザー(シールドケース内) FQ7928
中央下 第二局部発振回路 HC-49/U 60.770MHz 水晶振動子
の右上 主CPU(マイコン) MB90P263PFV-G フラットタイプLSI
右下 マイクロプロセッサーMB89133APFM-G及び 周辺IC入・出力ポートIC群 EEPROM
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各基準信号発生回路 |
第二局部発振回路 図面 X2001 水晶による発振回路 60.770MHz HC-49/U水晶振動子の不良
この結論となるには長時間悩みました。VCOアンロックになる原因としては様々な回路が絡み合います。不良部品特定に相当の時間がかかってしまいました。不良個所と判明しても交換する部品が手近にありません。部品が手元にある場合は短時間で修復できていたと思います。この部品しか考えられないと最終判断に悩みました。
又この部品は市場では簡単には入手できません。八重洲からの部品供給は打ち切りです。代用品としての手持ち部品もありません。水晶振動子を工作する設備・技術力も持ち合わせません。水晶振動子製造メーカを探し発注しか最良策はありませんでした。電子パーツ販売店なども探しましたが水晶振動子を代用するにも同じ周波数は見つかりません。
真空管オーディオ工作用の測定機類は多数所有していますが 扱う回路が高周波領域とデジタル制御回路です。高周波関連の測定機器類は多数所有しておりません。浅学な知識を絞り出し挑戦しました。
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第二局部発振用 水晶振動子 60.770MHz HC-49/U 左不良品 右特別注文品 |
その中で老舗の三田電波㈱営業担当者様と交渉の結果オーダー条件は
最低5個以上であれば受注可能です。
1個,2個単位でも供給は可能ですが5個と納入価格は大きく変わりません。
納期は受注確定後2~3週間程度です。
との回答でした。
技術的な内容を打ち合わせの結果 故障している水晶振動子を送付すれば 不良と思われる水晶振動子特性までチェックの上での製造です。今回5個のオーダーとしました。後は 諸経費・納品方法・支払条件などの打ち合わせです。少量製造にも対応いただき有りがたいことです。
息抜きに少し横道にそれます。雑談
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50年前に製造された三田電波製水晶振動子 HC-6/U型 |
当時工作した50MHz帯空中線電力1WのAMトランシーバーはこの水晶を使い 高額であった電力増幅用トランジスター東芝 2SC502 です。発振・励振トランジスターはNEC 2SC38,32 でした。トランジスター回路ではうまく変調がかからず励振段にも変調信号を加えた回路構成です。受信機は短波付きゲルマニュームトランジスター8石ほどのポケットラジオに4石のクリコン搭載で7MHz帯受信です。その後愛用していた50MHz帯トランシーバーは井上製 FD-AM3型 です。悪友はトリオ TR-1000型でした。現在も実家の押入れにあります。その後日新電子製 PANASKY MARK6型 に装着して運用していました。パナ6で使用する固定チャンネル水晶は8MHz帯 FT-243型でしたが 邪道ですがHC-6/U型でも運用はできました。現在でも パナ6 は山小屋に保管してあります。終段管は 2E26 変調器 6G-W8 P-P であったと記憶しています。当時TVI・VFOのQRHが発生する無線機で有名でした。重たい鉛蓄電池を持参して標高の高い山頂での運用です。移動手段として移動車両はトヨタ 初期型 パブリカ 強制空冷水平対向 2気筒OHV697cc U型エンジンです。登坂力も弱くエンジン焼け気味となり休憩しながらの移動です。現在の軽四より性能は劣ります。パブリカには金属製後部バンパーに取り付け金具を取り付けスフリング基台+1.5mのホイップアンテナでモービル運用です。その後の自家用車は1100cc初代カローラ,1200cc 2代目カローラ と乗り継いでいます。カローラ時代はFM機 TR7200 144MHzでした。以前は20年愛用したハイエース100系ワゴンでしたが現在はアルファードANH20系です。無線機は搭載していません。パブリカ当時発電機は所有しておらず ディーゼルトラック用バッテリー 容量70A/h で山頂では数時間の運用しかできません。後はQRPのFD-AM3 の出番でした。周辺は障害物・家屋などは何もありません。TVIも気にせずの運用です。マスプロの5エレ八木アンテナを担ついでです。実家ではTVIのためHFしか運用できません。若かりし頃の思い出です。当初50MHz AMのトランシーバーは固定水晶だけでの運用が主体でしたが その後の機種はVFOが付加されました。当時のVFOは周波数の安定度は悪く水晶振動子での運用も多かったと記憶しています。50MHz帯HC-6/U型水晶は高額であり数多くの種類は購入できていません。部品整理棚をのぞいてみますと 50.1,50.2,50.25,50.35,50.4MHzとクリコン用43MHzがありました。全数 HC-6/U タイプです。当時のクリコンは5MHz帯もしくは7MHz帯に変換が主流です。HF機は組み立てキットの真空管式送・受信機で振幅変調方式です。終段管は松下 S2001A(6146B互換品?) でプレート・スクリーングリッド同時変調です。変調器の電力増幅管は 6B-Q5 p-p でした。これも実家の押入れ保管です。今となっては骨董価値のない ガラクタ収集 これが貧乏人の特長 物を捨てられない症候群です。
今回無線機修理に部品調達費用として一万円弱の出費です。これだけの費用で修復できれば技術費は自己での修復ですので 業者並みの技術費用・労務費を時間換算すれば大赤字です。しかし修復作業労務費はとりあえず無料と換算しました。何とか三田電波に支払った金額で修復完了できたわけです。量産品のように数多く同じ部品発注であれは納入単価も下がりますが このような単発的な発注であれば納入単価は高額となるのは当然です。
水晶振動子は精密加工された部品です。発振回路により特性も変化します。数回製造技術者とのやり取りもありました。無線機の発振回路図を送付し検討してもらいました。発注に際し当方より注文書を発行し注文請書も取り交わしました。諸経費として運賃・代引き手数料も含まれた納入価格です。
今回故障診断・修復作業に使用した骨董品測定機器類
デジタルマルチメーター Advantest R6551
周波数カウンター タケダ理研 TR-5142 80MHz
オシロスコープ KIKUSUI COS-5020 20MHz2現象オシロ HP 1202B
標準信号発生器 SSG SANWA MODEL SG-8 30MHz
オーディオジェネレーター Shibasoku AH979G
回路計(アナログテスター) YEW 3201
50Ω疑似空中線 メーカー不明 200W型
通過型電力計 Kuranishi RW-211A
定電圧電源 TRIO PR-602A (Max 25V-3.5A)
蓄電池 GSYUASA PWL12V24 12V-24A (送信テストのみ)
(フローティングチャージモード 13.8V)
FT-920 サービスマニュアルは英文ですが入手しました。マニュアルでは調整・点検に高周波電圧計が必要ですが オシロスコープ波形で実効値換算すれば代用できると判断しています。オシロの波高値(peak to peak)÷(2×√2)=**/V,rms と換算できます。オーディオ用ミリバルは複数台所有していますが高周波領域では使用できません。頭の痛いことです。山小屋では骨董品測定器類ですが HP製100MHzオシロ,ディレー付・安立製スペアナ1.7GHz ・目黒,安立製 SSG・DC~550MHz,50Ω/30W終端電力計 を所有していますがこの10年程必要がなかったため通電・点検をしていません。又自己校正を実施しておらず信頼性がありません。仕方なく自己校正済みのオーディオ用骨董品測定機器を使ってでの修復作業となりました。自宅にもN接栓仕様DC~300MHz200W型50Ωダミーロード・DC~1200MHz30W型50Ωダミーロードは保管してあります。何とか修復・調整できるように周辺環境を整えました。オーディオ用途であればいつでも測定機類は使用できる環境としてあります。高周波を扱うのは久々です。
参考記載 (詳細はサービスマニュアルで確認してください)
サービスマニュアルに記載されていた PLL・VCO 回路点検・調整数値及び測定ポイント
2nd local osc 60.770MHz±1KHz TP1002 0.7V RF/V,rms
TP2005 1.0V±0.1V RF/V,rms
PLL BPF HF TP2004 70mV RF/V,rms VHF TP2001 70mV RF/V,rms
1st local osc TP2001 1.0~8.0V/V,DC 5 Band division
1st local output J2012 coaxial 50Ω loud 0dBm±2dB(RF) at 14.200MHz and 52.000MHz
今回のような水晶振動子故障の場合 良否判定として 100MHz 以上の能力があるオシロスコープ又は周波数カウンターを準備し TP1002 もしくは TP2005 を連続監視すれば判別できると思われる ! ! との結論となりました。長時間動作原理等解析し悩んで修復の結果 あとの祭りですが判明しました。
余談・横道にそれます。修復に使用した測定器などのお話
高周波電圧計(RFミリバル)では測定可能な周波数を明記してありますので測定する周波数が測定可能範囲内の測定器を使用してください。又専用プローブを使って測定ください。プローブ内には検波・増幅回路が内蔵されている物もあります。又RFミリバルでの測定方法ですが 開放電圧測定なのか 50Ω負荷での電圧測定なのかを確認してください。測定電圧は回路インピーダンスにより測定値は違ってきます。オシロスコープでも同様です。通常のオシロスコープ・プローブを使った測定の場合では オシロスコープの入力抵抗はほとんどの場合1MΩ(ダイレクト)又は10MΩ(×10)です。入力容量値として数10PFほど存在します。100MHz以上を測定できるオシロでは低容量プローブとなり高額になります。入力容量値が測定誤差を招くからです。オシロのプローブは消耗品的な扱いです。道楽では新規プローブ購入費用も馬鹿になりません。HP純正では数万円もするプローブも存在します。
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参考 アナログ・オシロスコープ波形観測 菊水COS-5020 |
計算すると W=I・E より 0.001(W)=E×E÷50(R) より E×E=0.001(W)×50(R) 0.224V/rms の値が 0dBm となります。0dBm とは 50Ωの負荷に1mW 高周波電力が消費するときに発生する電圧を言います。
SSGなどでも同じくdB表示されますがよく見るとdBμとなっています。この基準は1μVの高周波電圧値を0dBμと表示します。負荷抵抗値は明記されていません。1mVであれば電圧ですのでデシベルで表示した場合1000倍ですので60dBμとなります。八重洲のサービスマニュアルでは0dBμ値を0.5μVと記載されており基準電圧を確認しなければ正しい調整とはなりません。1/2倍は-6dBですね。**dBμの単位はは受信感度・Sメーター調整に使われる単位です。
この 0dBm の高周波電圧をオシロスコープで観察した場合では 観測された波形の最大値と最小値との電圧差を見ると 0.224V(rms)×2×√2=0.622V(P-P) の大きさである波形が観測できます。測定結果のオシロ波形より逆算すれば実効値電圧は計算できます。
オーディオ(AF)では 0dBm は 0.775V/rms であり 同じ 0dBm であっても基準値が異なります。1mW・600Ω です。
記載されている数値では実効値を表す rms を省略する場合があります。必ず単位を確認してください。間違った調整となることがあります。dBの表示も同様です。交流電圧は通常実効値電圧を表しますが ほかに最大値電圧・平均値電圧・尖頭値 P-P(Peak to Peak)電圧表示が存在します。オシロ観察では尖頭値であるP-Pの波形電圧値を表現する場合がほとんどです。もしも測定において負荷抵抗値が明記されている場合 その負荷抵抗に発生する電圧を読み取ればよいことになります。又測定においてはテストポイント等での測定に多い開放電圧と負荷接続による電圧では 回路インピーダンスの違いにより読み取れる測定電圧値が異なります。無線機関連調整では同軸不平衡(coaxial)50Ω負荷が多いと思います。余談ですがdBmを表すのにオーディオでは600Ω(平衡)負荷が測定の基準です。
これが理解できればオシロスコープで 実効値換算ができます。RFミリバルを所有していなくてもオシロスコープがあれば調整はできます。オシロは100MHz 以上の性能が必要と思います。旧型機種であればIF周波数はここまで高くありません。10MHz程度と思います。HF帯域であればオシロは20MHzもあれば実用になります。ただ20MHz 程度のオシロであったとしても垂直増幅回路の周波数特性が100MHz近くあれば60MHz測定であれは高域での減衰が少ないため正しい波形表示をするオシロも存在します。通称20MHzのオシロの場合波形観測において20MHzまでは測定誤差が発生しないことが条件であり垂直増幅回路周波数特性はDC領域から相当高域まで伸びていると思います。このようにオシロの特性も確認しなければなりません。スペアナでは広帯域増幅回路が搭載されており 数GHz帯まで伸びているフラットな特性の増幅回路で構成されています。
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横河 デジタル・オシロ DL2140B 200MS/s 300MHz |
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iwatsu SC-7203 UNIVERSAL COUNTER MAX-1300MHz |
又このGPS衛星を活用した 10MHz校正基準器の工作は材料費用5000円までの出費で工作できます。部品点数も少なく実用性はあると思います。工作内容は簡単な部類と思いますが ただPCでプログラムの変更作業が必要となります。興味のある方は musenan19.blogspot.com を参照ください。多少参考になると思います。2019/2追記
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新規工作した 10MHz校正基準器 |
雑談
新スプリアス規格調査報告書にはスペアナ測定データーなど報告書は校正証明書のコピーを添付しなければなりません。しかも校正日から1年以内の校正証明書が必要です。業務用無線設備落成検査と同様と思いますが。総務省お役人様の考える事項ですね。アドバンテストのスペアナですと取引証明用(完成図書とじ込み用)校正証明を取得するには 販売価格の1/10程度 200万円であれば20数万円程校正費用が発生します。不具合がある場合調整・修理費用として別途費用請求されます。しかも旧機種は校正を断られます。おおむね10年前後と思います。
リース・レンタル測定器をレンタルするに使用期間が一か月とか半年とかとして交渉しますが 道楽での個人出費では経費処理ができないため不可能に近いと思います。某高額の精密測定器では校正証明書付き機器をオリックスでレンタルすればびっくりする費用です。新品のしかも高級なアマチュア無線機が購入できます。国の方針として新品のアマチュア無線機を購入促進策と思いますが。
道楽での運用では 所有している骨董品測定機器類は事業所用途とは異なり 完成図書・性能保証に添付する取引証明の必要性がありません。自己満足の世界での運用です。研究所・自衛隊・事業所放出品・リースアップ品を多数所有していますが 故障修理・代用部品などを工作・移植調達し修復調整してあります。自己校正後活用しています。自己校正の基準となる測定器は同じく骨董品でありもちろん校正証明は取得しておりません。最低YEW製アナログ測定器0.5級品(class 0.5)を使います。又校正に必要な校正器も作成します。適当な間隔で自己校正作業実施後 工作・修復作業などに数多く使用していますが致命的な諸問題は発生していません。
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交換した水晶振動子 HC-49/U 60.770MHz X-2001 |
今回故障診断において 時間が経過することにより症状が発生していることから 電子部品の温度変化による故障が原因として過去からの経験を踏まえ調査しました。
まず実施したのは症状発生前後での各部品ショックテストです。ショックテストでX2001 の水晶振動子が不安定動作時ショックノイズが発生することが判明しました。最初は水晶振動子の半田付け不良と思われ再ハンダ付けしましたが改善されません。水晶をラバーで接着固定しても同様です。
次に電子基板故障診断でよく使用する冷却スプーレーの散布です。今日では使用禁止されている骨董品急冷材(R-12)を使って水晶振動子を冷却すると症状は発生しなくなります。それ以外の冷却材としては清掃消耗材の エチルアルコールを不良と思われる部品に滴下です。アルコールの気化熱で冷却することができます。
その時点で発振周波数の測定およびオシロスコープ観察では大きな異常個所は見受けられません。オシロの周波数特性が低いため 詳細の波形観測ができません。この時程100MHz以上のオシロが必要と思いました。・・・・骨董品真空管式オーディオアンプでは10MHzもあれば実用となります。
この水晶振動子の不良であると確定・判断には相当時間が経過しています。なぜならPLL,VCO回路解析に多くの時間を費やしています。又このような水晶振動子単体の故障経験はありません。言いたくない言葉ですが近頃よく耳にする 想定外の故障 です。これが診断に手間取った理由でもあります。
その後三田電波㈱に技術的な相談をして特別注文の水晶振動子を発注しました。
注文確定後約2週間ほどで水晶振動子が到着し 基板に取り付けて長時間エージングを実施しましたがその後症状は発生していません。3日後ようやく修復完了と判断しました。時々症状故障の場合 修復後正常動作確認作業もエージングを含め長時間必要です。
故障した水晶振動子 不具合内容の推察
水晶振動子内部の温度変化による振動子のマウント不具合と推察します。通常水晶振動子はショックノイズは発生しません。水晶振動子の素子取り付け構造に問題があったと推察できます。水晶振動子単体での故障事例は少ないと思います。故障した水晶振動子にはメーカートレードマークとして Hz とプリントされています。このプリントされていた名称で検索しましたが製造メーカーは特定できませんでした。すでに廃業されている製造業者かもしれません。
ヘルツ㈱水晶振動子製造メーカーは大手京セラに子会社として2006年10月に吸収合併となり法人としては消滅していました。現在の会社名は京セラキンセキヘルツ㈱となっています。
金石舎も三田の水晶と並び昔のアマチュア無線家には懐かしい水晶振動子メーカーです。
設計者と故障修理者では思考方法が異なると思います。今回のように部品の構造も理解できないと故障診断はできません。又様々な故障原因・壊れ方も推察できなければ同様です。実際にほかの部品故障においても推察力・洞察力も日ごろから経験しなければ迷路に迷い込んでしまいます。過去によく似通った事例がなかったかなども含まれると思います。時には故障した部品を分解して故障原因を確認・追及することもあります。一種のこだわりです。水晶振動子でのこのような故障事例は初めての経験です。 1974年6月リリース 山口百恵 ひと夏の経験 をふと思い出しました。CDは所有しています。
当時製造された FT-920 シリーズは国内外とも結構な数が製造・販売されていると思います。量産機であるからこそ 同一の故障が発生していると推察します。先日も部品取り機入手のためインターネットオークションで検索しましたが 自分の思っている落札可能金額より結構高額な価格で落札されています。同じ故障症状の FT-920 が取り引きされていました。同じ故障個所のように思います。この故障状態は水晶製造メーカーの製造工程において製造方法が同じであれば同じ故障を引き起こすことも推察できます。多数の人が競り合い高額となりましたので入札には参加しませんでした。自己所有分のFT-920が修復できましたのでオークションサイト落札での部品取り機入手は却下となりました。
10年以上となる機器ですので 機器減価償却価格計算により 当時購入価格の1/10程度であれば落札してもよいと思っていました。とは言え結構市場では購入希望者が多い無線機であると思います。
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交換した水晶振動子の半田付け面 |
FT-920 故障修復完了後入手したデジタルオシロ DL2140B を使って故障状況の再現検証です。
今回の故障は第2局部発振回路の 60.770MHz の水晶振動子でした。今回故障状況の確認作業として無線機の使用されている回路を別基板に組み立て 環境試験をしましたところ不良症状が確認できました。
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2nd OSC 再現基板 |
この発振回路では共振回路が同調していない場合発振しません。ダストコアを回転していくと発振開始する場所から波形がpeakとなり まわしすぎると発振停止となります。最良点の調整はオシロスコープ波形観測か回路電流により最大値に調整しなければなりません。コアの回転角度としては±90度以内です。回路電流は3mAから0.5mA程度増加します。+12Vからの供給側には100Ωの金属皮膜精密抵抗両端の電圧を測定すれば電流値換算ができます。
画像の下部は水晶振動子全体を加熱するために工作した部品です。0.2tの銅板を加工しHC-49Uをすっぽり包み込むための銅板加工品です。その銅板に板抵抗器を発熱体として水晶振動子を加熱する構造です。DC:5V 電源により 0.5W 前後の熱源としました。手で継続して触れることができ続ける温度になりました。OCXO のようなオーブン構造です。
このような故障診断の場合 回路動作についても理解していないと故障診断はできません。
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横河(YEW) DL-2140B 観測画像 |
上図は再現した水晶発振回路の測定波形です。
2次コイルに負荷として周波数カウンターとオシロスコープを接続したときの波形です。使用したオシロスコープの水平時間軸は 10n sec/DIV(100MHz/DIV) であり 垂直感度は 500mV/DIV です。測定プローブは10対1を使用していますが 本体にプローブ倍率をプリセットしてありますので 波形を測定するにアナログオシロとは異なり電圧換算する必要はありません。今回の検証回路での波形観測は 正弦波 2.2V p-p の波形といえます。1サイクル分の時間軸は 約16n sec ですので周波数は f =1/10n sec より 62.5MHz との計算結果から 約60MHzの正弦波であることが判明します。
今回測定に使ったオシロでは 10n sec/DIV が通常モードでの最速時間軸です。メーカー公表 表記上300MHz 能力のオシロですが Zoom 機能により拡大モードモード最速時間軸 50p sec/DIV であるためオシロとしては 300MHz の 能力保証があるわけです。
同じ波形を 20MHz のブラウン管式オシロスコープで測定しましたが正確な波高値は測定できませんでした。今回の診断に時間がかかった理由です。20MHzのオシロではここまで鮮明な波形観測はできません。性能能力外です。
サービスマニュアルによればこの発振回路でのスペックは 2nd local osc 60.770MHz±1KHz です。周波数観測は SC-7203型機で 60.769212MHzを測定しました。約800Hzの誤差であり規格内です。
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故障している水晶振動子を加熱試験 |
その時の水晶は振動子の温度ですが指先で連続して触れ続ける温度であり 4~50℃前後と思います。
FT-920で1時間ほど通電後の水晶振動子付近の温度です。メイン基板は無線機の底の部分に取り付けられており ファイナル部の温度上昇する個所とは異なり 放熱効果の悪い部分にメイン基板はあります。やはりこの水晶振動子の温度変化による発振停止でした。
まとめ
今回の故障診断・修復作業については 注意事項としてメイン基板の修復には細心の注意をしてください。チップ部品が数多く採用されており ICもフラットパッケージタイプです。それと各基板間を接続している部品にフラットケーブルが採用されており簡単に壊れてしまいます。特にコネクターの破損に注意してください。フラットケーブルの接触面は素手で触れてはなりません。今後接触不良を引き起こすことが推察できます。今回何度もメイン基板を取り出しての半田付け作業が数回発生しましたが他の箇所の連鎖故障もなく無事修復作業が完了しました。無闇に数多くの部品交換はしません。交換した不良部品としては たった一個の水晶振動子だけです。落雷・落下破損・水害などの事故・天災被害品でない限り多数箇所故障は通常故障であれば発生しないと思います。連鎖故障は別ですが。発振回路の調整は実施していません。SVR・トランスなどの調整箇所は無闇には調整はしません。ほとんど触れません。異常がある場合は別ですが。もしも調整する場合は調整前の状態に戻せるのが条件です。素人・エンジニアもどきは無闇に触りまくります。これが最悪の こ・わ・し・や です。メーカーサービス部門の修理担当者が一番遭遇したくない故障修理です。修理時間が長時間となり技術者からの立場としては内部を触れてほしくないわけです。最悪修理拒否です。骨董品オーディオ機器テープデッキのTEACでは内部を触れずに修理依頼が条件となっています。そのため旧機種では部品だけの販売はされていません。メーカー修理のみの受付です。
オシロ観察では 故障前の正常動作測定値と比較してもほぼ正常値です。PLL周辺調整も実施していません。各テストポイント点検ぐらいです。特注水晶振動子の特性が合致したようです。各関連した回路は正常に動作しています。動作原理を元に故障原因を追究し故障個所の診断には結構手間取りました。事業者であれば営利を追求されますが 営利とは無縁の道楽作業であるからできた技です。
的外れに無闇やたら周辺部品を多数交換する 部品チェンジニア 存在するのも事実です。サービスエンジニアとしては 短時間に多数の部品交換で完成させるエンジニアと 故障した部位だけ交換完成するエンジニアに2分されると思います。前者は空中配線・基板パターン切断・特に汚い半田付けで目も当てられないような修理です。その後修理を引き継いだ場合修理意欲も半減します。交換した部品をすべて元に修復後 真犯人は別の箇所であり故障個所の部品交換数は多くありません。欠陥部品を多用した機器は別ですが。その例としては安価な海外製造部品を使っての海外製造品、輸入部品の電解コンデーンサー容量抜け、数十年以上前に製造された半導体・IC類のマイグレーション・ウィスカ症状による不良などです。このような故障が多発する場合 数多くの部品交換することもあります。特に骨董的な電子機器において時々発生しています。おおむね家電電子機器などの寿命は10年ほどと思います。そのころになるとメーカーでは 部品保有年限が過ぎており修復できません。買い替えてください。・・・・で おしまい。今回故障した無線機の八重洲も同様です。
一部有名なオーディオ専門メーカーでは修復費用の対価は別として 骨董的な商品であっても修復してくれる場合もあります。とりあえずエンジニアが修復可能かを判断するため修理受け付けてもらえます。
今回の故障事例では 少量発注ですが新規に部品を作成してもらえる製造業者を見つけ出せたため無事修復完了できたわけです。
無銭庵 仙人の独り言
骨董的なオシロスコープの自己校正
下記画像はオシロスコープによる 20MHz 校正基準器の波形観測です。工作した20MHz校正基準器は水晶振動子とロジック IC SN74HCU04 による発振回路の信号観測です。アナログブラウン管 2現象オシロスコープは 菊水 COS 2020 20MHz能力の観測波形です。時間軸は0.2μsec/DIV で測定しました。
通常アナログオシロの場合 20MHz 能力といえば 1/DIV 格子目盛の一升目に一サイクル分の波形を投影することの能力を言います。例えば最速水平時間軸が 0.5μsec/DIV の場合の周波数を求めると f=1/t より 1/0.5μsec=2MHz と計算できます。おかしいですね20MHzとはなりません。ところがオシロスコープには10倍の拡大モードがあり最速時間軸は 0.02μsec となります。この場合は 20MHz/DIV となります。ただ通常のブラウン管オシロの場合画像は通常の測定より観測画は暗くなります。
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COC 5020 水平時間軸 0.2μsec/DIV 垂直電圧軸 0.1V/DIV 10:1プローブ使用 |
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COC 5020 水平時間軸 0.02μsec/DIV ×10モード 垂直電圧軸 0.1V/DIV 10:1プローブ使用 |
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DL-2140B 水平時間軸 0.02msec/DIV 垂直電圧軸 1.0V/DIV 10:1プローブはプリセット ch-1 |
マーカーでの表示は -50nsec と表示されていますね。観測波形1サイクル分です。周波数換算すれば20MHzですので時間軸は狂っていないと判断できます。
このようにオシロを使っての波形観測前には校正器を使って動作確認をお勧めします。校正基準器は簡単に工作することができます。電圧軸校正は1KHz 5Vp-p方形波でプローブの校正を兼ねて作業します。
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DL-2140B 水平時間軸 10μsec/DIV 垂直電圧軸 1.0V/DIV 10:1プローブはプリセット ch-2 |
FT-920 参考として内部構造を画像で御覧ください。
前面の操作・キーボード部は故障しておらず他の方々がフォトアップしていますのでそちらを参照願います。
ただメインのVFOつまみ軸部のグリス切れのため回転はスームズに動かなくなりました。プラスチック軸受けと軸は金属であり注油するグリスはプラスチック部を劣化させない物を使わなければなりません。注油グリスは信越のシリコングリスを注油しました。現在つまみの回転はスムーズとなっています。
近代に製造された機器においては安価なプラスチックを主体とした構造品が多いと思います。数十年以上使用に耐える構造ではありません。製品重量で商品の優劣は判別はできませんが近代製造品程軽量となっています。機能性は良くなっていますが反対に寿命は短くなっていると思います。若者の必需品 スマホ・タブレット端末などは数年もすれば旧機種となり買い替え需要となっています。
この大量消費時代に逆らって 骨董品機器を骨董品測定機器を使って初期性能を維持する作業が道楽作業です。となれば骨董品測定機器類まで修復・改造・調整する事も時には必要となります。
現在使用しているガラケーは購入後7年近く使用していますがさすが Maid in JAPAN 安定した動作で故障知らずです。キャリヤからはスマホ買い替えメールばかり送られてきますが スマホに買い替えるメリットがありません。デメリットは通信費が高額となるからです。最低緊急連絡電話と簡単なメール交換ができれば事は足ります。大量・高速データー通信は光ファイバー接続PCに軍配があります。未来を支える若者達はスマホ症候群となっている時代です。近代人種はスマホを取り上げた場合気が狂うと思います。歩きスマホ・電車・バスの中で何をしているかは不明ですが。SNSで遊んでいるか ゲームに集中していると思います。困った時代が到来しました。通信事業社 儲け頭は国内三大キャリヤと思います。反対にアマチュア無線家は衰退の道を歩んでいます。
メイン基板部品取り付け面 |
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メイン基板ハンダ付け面 |
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終段電力増幅部(ファイナルアンプ) |
無線機の13.8V直流電源ですが市販品のAC-DCコンバーター方式を使った場合は必ず冷却ファンにより耳障りとなります。静音ではありません。そのため現在使用している直流電源はファンレスとして設計したため非常に静音となっています。その代償として大きな放熱板が必要となっています。中には冷却ファン音が大きいことを自慢している因業爺さんたちも見かけます。ヘンリー製 ? アルファー ?
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アンテナチューナーマイコン制御基板 |
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アンテナチューナー同調回路部及びSWR検出回路部 |
アンテナ切り替えリレーはオレンジ色の小型でした。画像中央上部です。SWRデーターを収集し 水色小型リレーで各コイル・各コンデンサーを切り替えます。同調コンデンサーは高耐圧のディプマイカコンデンサーが採用されています。
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DSP制御基板 D/A,A/DコンバーターとDSP LSI 2CH分搭載 |
現在送信用(TX)DSP回路は使用していません。このDSPユニットはオーディオ特性は良くありません。MP3ファイル形式の音質より悪いと思います。TX用DSP出力端子に切り替えスイッチを設け 8チャンネルプロ仕様オーディオ用ミキサーアンプよりの不平衡600Ω 0dBm 出力を直接変調用音声信号として入力し運用しています。アナログ信号ですがDSP音声変調信号と比較して各局からのレポートではアナログのほうが良い音質とのレポートをもらっています。現在TX用DSPユニットは切り離しての運用です。DSPの音質が良好とは思えません。現在のDSP信号は改善されているようです。20年前の設計ですの納得できます。今しばらくはアナログ信号でもって運用予定です。
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電源制御基板 +12Vと-12V定電圧電源回路 |
今回直流13.8V入力接続端子に電圧逆接続防止のためプラス側端子にはカソード マイナス側端子にはアノードとなるようにダイオードをも挿入しました。逆接続した場合ダイオードが短絡となり保護ヒューズが断線し無線機内部には逆接続電圧が加わらないような構造としました。高額な電力増幅FET保護・各回路保護としてです。電源逆接続事故は回避しなければなりません。画像右下参照
メーカー修理と業者修理の違い
今回の無線機は八重洲という会社が社外品の各部品を寄せ集め 製造工場で組み立て調整後検査を経て完成品となり販売していると思います。自社での製造部品はごく限られたものと思います。使われているほとんどの部品は社外品です。メーカー修理業務では生産されたときの新品部品もしくは後日再生産された純正部品を使用しての修復作業です。そのため通常故障しない部品まで数は少量ですがサービス在庫として保管しています。メーカーが隠ぺい工作をしている多発傾向部品は多数在庫していると思います。ほとんどの場合保管される部品は機能部品です。汎用部品の場合はいつの時代であってもアフターサービスは可能ですが外観部品などはほとんどの場合数年で供給打ち切りとなります。特に外観プラスチック成型部品などが該当します。理由は金型がないため再生産できません! といわれます。あくまでも機能を維持するための部品が保管されているわけです。経産省からの指導により機能部品にはメーカーでは長くて10年ほどは保管されていますが それ以上となると部品調達ができないという理由で修理拒否となります。メーカーからは買い替え推奨されます。ベストセラー品で製造時期が長期間の場合のみ生産終了後との規定により部品は保管されますので多少サービス受付可能期間は長くなります。メーカーでは部品保有年限が過ぎれば在庫部品は廃棄処分となります。損失計上が発生します。使用しない部品保管にも経費が掛かっているわけです。サービスパーツは諸経費が加算され高額な価格に設定されています。ただし特売品に見受けられる長期間流通在庫品・販売店長期在庫品などでは 生産終了後の機能部品供給期間が建前となっていますので 購入後4~5年ほどでも部品打ち切りの可能性はあります。故障がなければ儲けものですが。
メーカーには製造物責任法という足かせがあります。PL法です。修理受付拒否が理解できると思います。
又近年の商品ではACアダプター(別電源装置)を使う商品が多いと思いませんか。これは電気用品安全法(PSE)の規制を逃れるためです。この無線機では商用電源(AC100V)直接では動作しません。DC13.8Vで動作するため無線機自体はPSE法を厳守することはありません。そのためPSE法の対象となる別電源が必要なわけです。無線機リニヤアンプにおいてもしかりです。本体とは別のPSEマークの付いた電源装置が用意されています。
ところが修理業者の場合を考えてみます。メーカーのように製造時の新品部品で修復することが原則ですが メーカーからの部品供給不能の場合などは 新品代用・汎用部品の調達及び改造・特殊部品製造業者より調達・中古(再生)部品を使用して修復する場合もあります。これがメーカー修理との大きな違いです。たぶん入手困難な部品としては専用にプログラムされたマイコンなどのカスタムIC類と思います。部品取り機として故障した機器であっても入手し移植修復することもあるわけです。ユーザーからの修理預かり品で見積もりに必要な経費を請求する業者も存在します。その後修理キャンセルなどが発生した場合などユーザから現地廃棄処理の場合ですと その故障した機器を部品移植用として保管されることもあります。これが再生部品の入手方法でもあるわけです。数多くの修復されている業者程このような移植(再生)部品を数多く所有していると思います。ところが面白い現象があります。故障個所が同一箇所であるため修理用として使う部品が同じであることも発生します。それは設計・品質不良による多発傾向の故障と思いますが。又多発する場合は欠陥です。事故が伴えばリコール問題です。その反面古い故障品が修復できる確率が高くなるわけです。ユーザーにとっては修復できない場合はその機器は使用できませんが 代用品・再生部品で修復ができる場合は故障した機器が生き返るわけです。後は修復費用の対価を天秤にかけるのは所有者です。
このように骨董品機器となるとクラッシックカー修復と同様に新規に部品を加工・工作しなければ機能が回復しないことも考えられます。電子部品では50年前の部品であっても機能的に同じ性能の部品は現代でも調達は可能です。反対に特性は良くなっていると思います。コンデンサー・抵抗類が該当します。真空管は数は少ないですが海外で製造されています。一番厄介な機能部品はプログラムされたカスタムLSIは入手不能に近いと思います。汎用半導体は何とか代用品を見つけることができます。電源トランスなどは新規に製造してくれる事業者も存在します。今回不良であった水晶振動子は新規に製造可能な製造会社を見つけ出すことができました。
再生部品を扱うには一番厄介と思われる部品は フラットパッケージのマイコン関連です。最悪取りはず時 部品を壊してしまい(足折れ)再使用できません。その時に基板パターンも壊すことがあります。取り外す半田付け箇所の足数は100本近くなる部品もあります。故障した部品を取り外すには非常に難易度が高い作業です。機械半田付け作業前には基板と部品は接着剤で固定されています。それに100本近くの足を一気に半田付けを取り外すという困難な作業が待ち受けています。チップ部品の抵抗・コンデンサー・半導体はほとんど再使用できません。又修理が完了しても正常に半田付けが完了しているかの確認作業も大変です。ルーペ・顕微鏡が必要な場合も発生します。職人的な技術が必要となります。基板も集積度が上がり部品単体の修理ができない構造が増えました。たった10円の部品が故障であったとしても 基板・アッセンブリー交換となり 供給される部品単価が高額となるのが現代の電子機器です。こうなれば高度の技術を持ったエンジニアはあまり必要とはなりません。基板チェンジニアの仕事となり 修理価格が商品価格よりも高額となることもあり得ます。
修理が終わったね ご苦労様でした 我が家の飼い猫の代理猫より |
修復した FT-920 の場合 故障した部品は現在でも特別(カスタム)注文が可能な部品でした。汎用部品のように簡単かつ迅速に入手できる部品ではありません。使用されていた水晶振動子製造メーカー(Hz)とは異なりますが 同等の部品を作成している製造メーカーを探し出したわけです。水晶振動子の外形は特殊なものを除き規格品でもあるわけです。HC-49/U の外形です。ただ使用用途により製造される水晶振動子には同じ規格品とは限りません。発振回路・使用用途など技術的な打ち合わせができたため目的とする部品が入手できたわけです。誰でもできる簡単な作業内容ではありません。ご承知おきください。
もしも修復失敗の場合約一万円弱をどぶに捨ててしまうことにもなるわけです。パチンコ・競馬などの公営ギャンブルでの損失に比べたら少額の投資と思いますが。自由に使えるポケットマネーは雀の涙ほどしかありません。又ギャンブル・バクチ的な道楽・趣味は持ち合わせません。今回のようにあまり費用をかけず骨董品機器を自力で初期性能を維持できるように機能回復するための道楽作業における修復内容記述です。
故障をきっかけにいろいろインターネット上を検索しましたが どうもディスプレー数字がフラッシュする(PLLアンロック)故障が発生しているようです。PLL部の総合調整で修理できたとの動画での報告がありました。詳細の調整過程説明はありません。水晶振動子・FETとL,C共振回路での発振構造ではその他の回路部品故障確率は低いと思います。又経年変化による調整ずれは発生しにくいと思います。動画では調整ずれが多いと言っていますが。近年のデジタル制御機器では極端な調整ずれは発生しません。もしもずれる場合は回路設計不良か回路に使われている部品の選択間違いと思います。そのずれた原因も調査・追及せずにごまかし修理と思いますが。原因は今回の故障と同様に水晶振動子の不良と思います。水晶振動子のアクティビテイーの劣化と判断しています。一時治ったとしても再故障確率は高いと思いますが。あくまでも個人的な結論です。柳の下にどじょうは2匹以上いると思います。散発的に同様の故障は発生していると推察出来ます。八重洲では製造コスト削減策として水晶振動子を1円でも安価な製造業者に発注したことが原因かもしれません。あくまでも憶測です。
電波法の目的
この法律は、電波の公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的とする。
電波法施行規則 第三条十五 第四条二十四(アマチュア局)
アマチュア業務とは、金銭上の利益のためではなく、専ら個人的な無線技術の興味によって行う自己訓練、通信及び技術的研究の業務をいう。
もうしばらくはこのトランシーバーを使い隠れ山小屋でのお遊びが継続できるようになりました。新品の機器購入はしばらく延期とさせていただきます。
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いにしえの八重洲製トランシーバー |
現代の環境ではこのトランシーバー FT101ZD を運用に際しては内蔵VFOの周波数ドリフトが多く使い物になりません。工事設計書にはデジタルVFOを増設設計し分解能が1HzのDDS制御5MHz帯VFOを追加し デジタル制御無線機と交信しても周波数変動はほとんど発生しません。無線機に初期から搭載されている各Band用水晶発振器の周波数変動が目立つようになりました。
新スプリアス規格対応機種への変更申請
FT101ZD は第五送信機・新スプリアス規格対応機種として登録してあります。今後の保守が可能な状態です。新スプリアス規格機器として 旧登録機種 FT101 から FT101ZD に変更申請の結果 局免許を取得できました。時々通電・動作点検として電波を自由空間に放出し交信しています。今回修復した FT920 は旧スプリアス規格の機種であり 令和4年12月以降継続して使用できません。第一送信機として詳細添付資料を作成し新スプリアス規格機種として変更申請により新スプリアス規格はクリアとなりました。この先今しばらくは運用可能な状態となっています。TSSでの新スプリアス規格対応機種保証認定には提出後2か月強の期間がかかりました。その後の電管への変更電子申請は免許が下りるまで1か月かかりませんでした。
別の道楽・趣味である真空管式オーディオ機器については アマチュア無線のような国からの法的な規制はありません。アマチュア無線については運用に際し国からの免許取得が必須となり衰退していく道楽と思います。
新スプリアス規格対応により今まで登録し運用していた無線機は簡単には継続申請できません。現在運用ができている JARL認定機種・旧技適機種については継続免許のハードルは高いと思います。新スプリアス保証認定においては 機種銘板・製造番号・旧技適番号などの提示が必要な場合もあります。JARL認定機種・旧技適機種などは自作機と同様の扱いとなります。工事設計書など添付書類・資料を揃えるに結構な手数(日数)がかかります。同様にVHF,UHFの無線機も旧技適・JARL認定機種でしたが複数の書類等を作成・添付し新スプリアス規格対応機種として登録 全数新スプリアス規格対応の免許をが得ることができました。電子申請の記載項目は記入に際し理解に苦しみ難解でした。何とか電子変更申請完了です。詳細な記入見本を探しましたが見つけ出せんでした。
令和4年12月までに多数局は旧機種運用免許・ペーパー免許のアマチュア無線局は簡単に新スプリアス対応処置ができず 廃局 になると想像できます。
一番手間のかからない無線局継続には4級(旧電話級)アマチュア無線従事者免許所有の方であれば IC7300S(HF帯10W・50MHz帯20W機) 3級(旧電信級)アマチュア無線従事者免許所有であれば IC7300M(HF帯50W・50MHz帯50W機) 1級・2級アマチュア無線従事者免許所有であれば IC7300 (HF帯100W・50MHz帯100W機)を導入し変更申請することをお勧めします。ただし移動局として申請は空中線電力50ワット未満です。100ワット申請の場合固定局で申請が必要です。所有している無線従事者免許の操作範囲に合わせての無線機選択が必須となります。簡単に総務省に電子申請の変更申請により局免許取得できると思います。インターネット申請ができない場合 電管に従来の紙ベースの書類作成後提出する必要があります。IC7300系の無線機は新スプリアス規格を満足している無線機です。複雑な書類等を作成する必要はありません。ただ10数万円の機器購入費が必要と思いますが。各個人判断ください。八重洲の場合 FT-991A (HF帯~430MHz帯) がお勧めです。昔のからラジオ少年継続者 年金生活者 廃局 ? ! ! !
衰退状態のアマチュア無線の道楽はいつまで続くやら…?
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コリンズ製 軍用真空管式受信機 R-390A/URR |
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機種銘板 R-390A/URR |
機器銘板を見ると COLLINS RADIO COMPANY となっており数少ないメカニカルフィルターで有名な会社コリンズ製です。
製品重量は30Kg を超える機種であり 点検修理時には苦労します。一応動作しますが初期性能は出ていないと思います。
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PTO(VFO) |
心臓部であるアマチュア無線では局部発振用 VFO と呼ばれますが この受信機ではPTOと呼ばれるユニットです。アマチュア無線家の憧れと呼ばれるKWM-2より高精度のPTOが搭載されています。発振回路の真空管ヒーターはバラスト管と呼ばれる部品でヒーター供給電圧・電流を制御する部品が使われています。PTOユニットはコリンズ製ではありません。
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コリンズ製メカニカルフィルター群 |
通常はシールドケースに収められているコリンズ製メカニカルフィルター群です。異なる帯域のメカニカルフィルターが4種類搭載されています。現代にこれと同様のアナログ的な受信機の製造は困難と思います。真空管とメカニカル動作で1KHzが直読できる優れものです。
上記記載事項は道楽作業における個人的な記述内容です。間違った解釈が記載されているかもしれません。あくまでも参考程度の記述内容であることをご理解ください。多少とも記述内容を活用いただければ幸いです。この作業は自己責任での作業内容です。
by musenan sennin